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ACT ARME2 訪問者と落し物

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「よし!決めた!!」
ここは新ルイン宅。(なんで新なのかは第一話を読んでね)無駄に広い居間で無駄にごろごろしていたルイン、グロウ、アコ、ツェリライの四人だったが、唐突に叫んだルインに驚く。
「うるせえ、いきなり怒鳴るんじゃねえ。」
雑魚寝していたグロウが唸る。
「もう、眼がさめちゃったじゃない。」
ソファでごろ寝していたアコが文句を言う。
「静かな中で突然叫ばれると、耳に響きます。」
パソコンいじりながら忠告してくるツェリライ。
「・・・ねぇ。一人ぐらい『決めたって何を?』みたいなこと聞いてきてほしかったんだけど。」
期待していた反応と違い、ぼそっと愚痴るルイン。
「あー、はいはい。それで?何を決めたのよ?」
やっと期待した質問が飛んできたので、ルインは胸を張りつつ宣言した。
「わたくし、ルインは労働にいそしむことに決めました!!」
この一大決心に対する周囲の反応は。
「あー、はいはい乙乙。」
「くだらねえ。」
「エイプリルフールはとうに過ぎましたよ?」
完全に相手にされていない。
その様子に、憤慨しながら言い返す。
「ちょっと。なにを間抜けな返答してるんだよ。こちとらガチで言っているんだけど。」
すると
「は!?」
さっきまでとは打って変わっていいリアクションが返ってきた。
だが・・・。
「ルイン、なんでそんなことを・・・」
「絶対にやめとけ。」
「あなたは素直に労働できる人種ではありません。就職先の方に迷惑がかかってしまいますよ。」
その驚きの中に、誰一人として応援する者はいなかった。
「・・・・ひどくない?」
「いや、だって、ルインの日ごろの行いとか見てると、とても働けるなんて思わないもん。」
「同感だな。口も手も出るのが人五倍速いてめえが、人のために働くなんざ、想像できねえよ。」
「猪突猛進、傍若無人の体現者が労働に従事するなどということは、現実的ではありませんよ。」
えらい言われようである。
「なんだよなんだよ。せっかく人がやる気出して働こうつったのに、誰一人として応援してくれないなんて。どうせ僕に味方なんていないんだ。」
思いっきりいじけてしまったルインを見て、アコは少し同情したようだ。
「まあまあ、そんなにいじけなくたってさ。それで、どんな仕事をするつもりなの?」
「よくぞ聞いてくれました!!」
「うわっ立ち直り早っ。」
「今日から『万能屋 All resolution omakase』。通称AROを開設します!事務所はここ。社員は四人!」
「マ テ や。」
三人総がかりで話を中断させる。
「ん?どした?事務所はほかの家のほうがよかった?」
「そこじゃねえよ。」
「な・ん・で、そのなんとか事務所の社員に、あたし達がなっているのよ?」
そう聞かれると、ルインは
「え?   だって皆なら協力してくれるでしょ?」
満面の笑みでそう答えた。開いた口から八重歯がのぞく。
「あたしはイヤよ。一応ちゃんと自立してるし、ルインと一緒だと何かとトラブル起きるもん。」
「同様の理由で僕もパスします。」
「上に同じだ。」
当然と言えば当然だが、三人が三人とも拒んだ。だが、それで引き下がるようなルインなら、こんなに疫病神扱いはされない。
「そっか、僕一人じゃどうすればいいかわからないから、先に社会人やってる先輩方に協力を仰ごうと思ったたんだけど。じゃあしょうがないな。」
シュンとしおれ、先を続ける。
「一人じゃとても事務所なんてやっていけないよね。」
「ああそうだな。」
「じゃあこの計画は廃案だね。」
「必然的にそうなるでしょうね。」
「仕方ないから、明日からみんなの勤め先に行くとしようかな。」
「うん、それがいいんじゃ・・・・・・な?」
しばしのタイムフリーズ。そして時が動き出す。
「おいコラてめぇ!今なんつった!?」
「あんたがあたしのところに来るって!それどういう意味かわかってんの!?」
「やだなぁ。   わかっているから言ってるんじゃないか。」
満面の悪辣な笑みを浮かべるルイン。
「こ の 外 道 !!」
この程度の罵りは意に返さず、ルインの進撃はまだ続く。
「でも職場二つだけじゃまだ不安だなあ。せっかくだからツェルのマーケットの手伝いもしようかな。」
この一言で、それまで蚊帳の外から高みの見物としゃれこんでいたツェリライも参戦した。


その一時間三十七分ぐらい後
「―――――じゃあ、基本的に事務所は僕一人、みんなが協力者。それでいいね?」
「・・・うん。」
「納得はしてねえがな。」
「まあいいじゃん。なんかあったときは、僕一人に責任が来るんだしさ。」
「それはそうだけど。でもそれってつまりあたし達タダ働きしているようなものよね。」
「まあそんなにしょっちゅう呼ぶつもりはないから。健気に頑張ろうとしている仲間の手助けをするボランティアだと思えば。」
「今の状況で自分に対して健気などと、たわけたことを言えるその精神力には脱帽ですね。」
「いやぁ、ほめないでよ。」
「ほめてねーよ。腹黒狐。」



そしてそれから一カ月。
「い〜や〜。まさかこんなに何も誰も来ないとは。予想外だね。」
「当然の末路ですね。」
「やっぱり、ルインって言うだけでみんな避けちゃってるんじゃないかな?」
さらりと棘を刺すアコに、ツェリライが補足する。
「それもあるかも知れませんが、それよりもはっきりと分かっている理由があります。」
「いつもの如く、僕へのフォローは無しなわけね。」
ルインのぼやきは無視して、ツェリライが続ける。
「開業して以来、ただの一度も宣伝活動を行っていないんですよ。この人は。」
「え〜〜〜?」
もともと部屋の中に漂っていた呆れた空気が、一層強くなった。
「なんでしないんですか?宣伝活動。」
「ん〜。やっぱしないと駄目だったか。」
「当 り 前 で し ょ う が!!何一つ周囲にアピールもせずに、ろくに仕事が来るとでも思ってたんですか!?」
いきなり激昂するツェリライに、アコが驚いて後ろに身を引く。

「いやぁ、らしくないよ。ツェルはそんなに怒鳴るキャラじゃないでしょう。」
そう宥めるルインに、ツェリライの炎は沈下しない。
「怒鳴りたくもなりますよ!!あなたがただ看板作って飾っただけで開業なんて意味不明なことをしてくれたおかげで、少しアドバイスした僕に、全て諸々の手続き押し付けられたんですからね!」
「それは大変だったねえ。」
「労わるより何よりも先に、まず謝るべきだと思うんですが。」
「うん、ごめんなさい。」
ルインは素直に誤ったが、ツェリライは以前怒ったままである。
「普通なら土下座しても足りないくらいだと思いますけどね。確信犯なんですから。」
そう言い切るツェリライに、アコの疑問が入る。
「え?確信犯ってどういうこと?」
「簡単な話ですよ。この人は根っからの怠け者+荒くれ者ですが、馬鹿ではありません。開業するに当たって必要な手続きがあることは知っていたはずです。」
「ふ〜ん。それで?」
その切り返しに、若干の間が開く。
「・・・・・・(まだわからないんですか?)つまり、ルインさんは最初から僕に全部の手続きをやらせる腹積もりだったんですよ。」
「・・・まじで?」