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小鳥遊悠里花
小鳥遊悠里花
novelistID. 43486
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真夜中2

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少女の顔色が良くなかったのでとりあえずソファに座ってもらいコーヒーを用意しようとした。
「あ、コーヒーは大丈夫?」
「あ、はい……気を使わせてすいません」

「あんなとこにいたのって何か遭ったの」
「え……それは」
口ごもってしまう。

言いにくこととは思う。
目の前の美少女は、真面目そうに見えるだけになぜあんな繁華街にと思うのと後そこに居合わせる自分もだが。
よく制服姿の子を見るわけではないが、たまにいるのは知っていたが、その類でないことはわかる。

「あんなところにいたら、そりゃ誤解されるだろう」
「違います! わたし、そんな、あの」
「わかってるよ。そういう類の子でないのは。よく見かけるから……ここに長くいるとね、そういう子にも出会うんだ」

「あの、お礼まだでした。ありがとうございました」
最後はぼそぼそになっていたが感謝されていてホッとした。
コーヒーを入れて席に持って行ってから、砂糖やミルクを持ってきた。

「ちょっとマグで申し訳ないけど」
「いいえ……そこまで気を使われても」
そう言ってから砂糖やミルクを足していく。

「ところでこれ飲んだら送って行くけど家どこなの」
「帰りたくない……」
明らかに何かが違う。

「あんな何も存在していない、ただの巨大な箱みたいな家なんて」
「な、何があったんだ?」
聞き返すと表情がさっきまでのおどおどした感じから変わっている。

「あんなところはあたしの生れたところじゃないし、親なんて」
そういってマグを握り締めていると、
「そんなこと言わないの。ほら目の前の人が混乱している。美奈子ちゃん、落ち着いて。この人は事情を知らないの」

目の前で繰り広がっているのが、劇の出し物だと言われたら納得してしまうくらい表情も声色も違う。
一人劇を見ている感覚だった。
「あ、すいません。真夜を助けてくれた人ですね。わたしは……そのどう説明していいのかわかりかねるのですが、真夜の中の人格の一人です。こういうのを世間では『多重人格』って言うんですかね」

ボクは返す言葉もない。
にわかに信じてくれと言われても意味がわからない。
多重人格って。

なんか漫画か小説位のものだと思っていたのが現実にいる。
目の前に……。
「信じてもらえないのは確かにそうですね。わたしは真夜の中では母親的役割をになっている者で名前をゆの、といいます。さっきの子は「美奈子」人一倍危機管理の上手な子です。そして、家が嫌いでよく飛び出そうとして……実はさっきもそんなところで。助けてくださって感謝しています」

と真夜と言うその黒髪の美少女の中の人格である「ゆの」と言う人が言う。
「真夜の中には何人かの人格が存在しており、主人格の「真夜」以下、何人かおりまして、美奈子ちゃんはその中の一人です。中には自傷行為に走るものから真夜を支えるために存在している者、両親の前で「いい子」を演じる人格などいます。中には6歳くらいの人格もいるんですが」

ただ話を聞いていると、何人かの人格と共同生活を送っているらしいのだ。
その中には学校生活を円満にやっていくためだけに存在している人格もいるらしい。
大勢いる人格たちを束ねているのが「ゆの」で美奈子が暴走しそうになったので、表に出てきたのだという。

「主人格の真夜があんな調子だから入れ替わることでスムーズに生活が出来るようにしているの。真夜にはちょっと問題があって」
「さっき家のことを言っていたけど、それもあるの?」
そう聞くと「ゆの」は頷く。

「後「麻美」と言う子も関わっていて……彼女裏で結構やりたい放題で……真夜の姉妹に当たるの。性格には半分血の繋がった妹ってところで。真夜の父親が秘書の女性に産ませた子供でこの子が真夜にキツく当たって来ることがあって。真夜は学校では学校用の人格を出してそこはくぐり抜けているんだけど、麻美を前にすると真夜が出てきてしまい……たぶん想像していることで間違いないです」

「いじめ?」
「生ぬるいものではないです。精神的に来るように仕掛けていくんですよ。真夜は学校では成績もよく品行方正で通っているのですが……麻美だけあの子だめなんです」
「仮にも血が繋がっているなら……」

と言うとゆのは首を横に振る。
「無理です。麻美は憎悪の対象でしかないんです。真夜が。確かに麻美の立場からしてみれば何不自由していない真夜は羨ましい限りでしょうが、真夜は家にさえ自分の居場所がなかったんです。祖母がまだ生きていた頃は真夜はそれこそ厳しく躾けれ、母親との間に挟まれ苦しんできたんです」

「おばあさんと母親との間に何かあったの」
「わたしはあまり知りませんが昔からいる人格たちに聞くとかなり激しく言い争っていたそうです。主に真夜の教育方針で母親と揉めていたそうです。真夜はそんな母親と祖母のやり取りを見ながらでも母親に褒めてもらいたいだけにあれこれ……」

ゆのが口を閉ざし、それから呟いた。
「麻美とは妹と言っても誕生日が数ヶ月違うだけで学年は一緒でしたし、真夜の父親が認知していたこともあって麻美の生活は悪くなかったんですが、真夜の存在を知り、そしてそこから真夜をいじめだしたのは」
「憎悪の対象だったから?」

こくりと力なく頷く。
「真夜、貧血気味なのは……見てください。触ってもいいですよ」
そうって腕を出し、そして着ていた長袖をめくってみせた。

そこにあったのは何本もの細い線。
幾筋もあり、真新しいものから古いものまである。
「リストカットの跡です。これを繰り返しているため真夜は貧血気味なんです」

「鉄剤とか飲まないと行けないんじゃ……ってボクがそういうわけでないから、聞いた話だけど」
「はい……そこはわたしが監視してちゃんと飲ませているんですけど、たまに入れ替わってしまうとそうも行かなくて。美味しくないんですよ」
「だろうね……鉄剤っていうくらいだし。少し食べれる?」

「え」
「気分いいなら何か食べれるかと思って。無理ならコーヒー飲んでてもいいよ」
「気を使わせてしまってすいません」
「いいよ。ここには色々な事情抱えている人が集まってくるところだから」

ボクはそう言って台所に立つ。
少し軽く作ってみる。
実際、内緒でスナックの台所で簡単な調理をさせてもらっていたのだ。

手際よく野菜を切りフライパンを出す。
「あの」
「何?」
「真夜をここで預かってもらえませんか?」

その一言の前に言葉が出てこない。
聞き間違えたに違いない、違うんだとどこかで言い聞かせていた。
「いきなりで大変失礼なのはわかっています。ですが、真夜のことをあなたになら任せられると思うんです。あのままでは真夜が死に至ってしまいかねいのです」

と真摯な表情で言われてボクも困り果ててしまった。
「と言われても、今ボクにはそんな一人の女の子の世話が出来る程の稼ぎも度胸もないですし……」
「必要な金額は真夜に伝えてもらえれば建て替えることは可能です」

ボクは呆然とした。
この美少女のどこにそんな財力が
「真夜は、麻生財閥の令嬢であり、跡継ぎです。自由になるお金にはこまっておりません。それゆえに……麻美にいいように扱われて」
作品名:真夜中2 作家名:小鳥遊悠里花