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〜アルティナ編〜第2話

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今日、アルティナの家に帰るのが気まずい。それが最初に思った気持ちだった。

 そう思ったのは他でもない。霊樹の下でしたアルティナとのキスだ。

 キスを2回し、そこまでいい雰囲気だったのだ3度目を行おうとした。がその後が最悪だった。

 アルティナの姉であり、フォンティーナの現国王であるラナが酔っぱらいながらその現場を見ていたのだ。

 酒場から数十mも離れてるため当然、アルティナ、レイジ自身も気づかなくて、気づいたのはラナが

「あぁぁ!らたしの、レルテェナに、チューしろうとしれるチュー……!」

 その声を聞きその方向をみる。ラナだ。そう確信したレイジとアルティナは手を離しお互い顔を真っ赤にする。

 まぁ恋人同士だからいいだろ、とレイジは思ったがラナの行動は破天荒すぎて何をするかわからない。

 もしこれをいい振り回されたら、自分は大丈夫でもアルティナは必ず暴走するだろう、と予測する。

「りょっとぉ、みんらおきれよぉ。レイジとレルテェナがチョーして……」

 そう言いかけた時、自分の隣にいたはずのアルティナが姿を消した。一瞬ギョッとしたがすぐに落ち着きを取り戻しラナを方をみる。
 
 風を切るように走るアルティナがいた。あたりは暗いためよく見えないが、顔を真っ赤にしているため電光ような明るさを放っている。

「やぁぁぁめぇぇぇてぇぇぇ……!!」

 雄叫びのような声をあげてラナの方へと走っていく。その速さはオリンピック並み、いや世界最速というべきだろうか。悟○の乗っている筋斗雲並みの速さだった。

 ……いや実際どれくらい速いかわらないけど……

 ともあれそれだけ速かった。そしてその真っ赤に光る特急列車はラナを捕まえ、自分の家がある『銀の森』へと走り去っていった。

「すごい速さだなおい……」

 驚いたというより呆れた、というのが素直な感想だ。

 だがこれからどうしよう。アルティナを追って家に帰るのが妥当かもしれないが、ラナに見つかったこともそうだがアルティナと2度キスをしたため恥ずかしい。

 別世界エルデではキスくらい恋人同士だったら普通だが、エルティナは恥ずかしがり屋でありツンデレである。

 そのため、恐らくエルティナにとってキスはエルデでいう性的行為並みの神経を費やしていただろう。見た目的には普通だったがキスした時に触れた唇の体温は異常なほどに暖かかった。

 そんなことを考えながら自分の唇をなぞるように触れる。

「本当に、、、、したんだよな……?」

 自分に言い聞かせながら少しだけ笑みを浮かべ頬を赤く染める。

 自分の唇をなぞるだけであの時の光景が頭に浮かぶ。

「いきなり、、、、すぎたかな……?」

 あの時の行動に少し後悔するが、その分よかったこともあったので気にすることをやめよう。

「さて、帰るか……」

 恐らくアルティナは家にいるだろう。そう思いレイジは銀の森へと向かう。


 ◇ ◇ ◇


 レイジは銀の森の離れにある海岸沿いを歩いていた。

「そういえばここって……」

 レイジは足を止め空を見上げる。

 懐かしい、と心の中で思う。

 この海岸でアルティナに出会った。

 そのおかげでアルティナと結ばれた。

 それを思うとドラゴニア帝国には少し感謝してもいいんじゃないか、と思うが考えるをやめよう。奴らのことはもう考えたくないから。

 最初は喧嘩もしてたな。

 意見が合わず、争うこともあった。

 生活態度が悪いと叱られたこともあった。

 ……いやいまもだけど……

 そう思うと本当に懐かしく感じる。

 空を見上げていると、暗い世界を照らす月が見えた。

「そういえば、婚姻の誓いをしたときもこんな夜だったな……」

 懐かしく感じた。だけどこれ以上思い出に浸るのはやめよう。

 帰ることができなくなるから。

 気づくと帰りたくない、という気持ちはなくなっていた。逆にアルティナに会いたい、という気持ちが大きく膨れ上がっていた。

 レイジは砂浜を駆ける。行先はアルティナの家。そこで全てを言おう。

 今後のこともすべて…………

 ◇ ◇ ◇

 アルティナは、銀の森を姉であるラナを引っ張り大爆走している。

 それを見かけた妖精や動物は驚き逃げていく。
 
 普段なら悲しくなるアルティナだったが、今はそんなことは目にない。

 その理由は一つ、ラナをフォンティーナに返さないためである。

 幸い、今は酔いが回っておりデロンデロンになっているため(ほぼ自分のせいだが気づいていない)自分の家からは逃げられないだろう。

(もう、せっかくいい雰囲気だったのに……)

 アルティナは酔っ払ったラナを睨みつけ、

「も、もう少しでできたのにな……」

 と小さく口にする。

 でもこれでよかったのかもしれない。もしあのまましていたらきっとレイジにも迷惑がかかってたかもしれない。それを考えるとあの時ラナが来たことには感謝しなければならない。

 もう少しで自分の家だ。そう思い、足の速さを上げ、銀の森を爆走する。

 (レイジはどう思ってるのかな?あの時あのままキスをしてたらどうなっていたのか予想していたのかな?もしかしたらこんなドキドキしているのは自分だけであって実はレイジはあっちの世界でいろいろしていたんじゃ……!?」

 実際には考えられないがそう考えると悲しくなる。

 自分が初めてなのに、相手は初めてではない。小さなことかもしれないけど悲しくなってくる。

 目に生暖かい感触がたどる。無意識で涙が出てきた。

「あれ?どうして涙なんか……」

 過去なんか関係ない。今のレイジの一番は私なんだから!って思っても止まることなくボロボロと涙がこぼれ落ちる。

「アルティナ、泣いてるの……?」

 いままで酔っ払って寝ていた?はずのラナが喋り出した。

「な、泣いてなんか……」

 起きていたことにも驚きだが、このことをラナに知られるわけにはいかない。そう考え強がる。

「…………!レイジに何か言われたの!?傷つけられた……!?」

 ラナはアルティナの手を解き肩を掴む。いつの間にか走るのをやめただ泣いているだけだった。

 ラナは手に力を入れてアルティナの肩を掴んでいる。その顔は怒りを見せ今にも襲いかかろうとしている。

「そんなことじゃないわ。逆にレイジは私に優しくしてくれる……」

 原因不明の涙は止まり話せるようになった。

「じゃぁ、どうして……!」

 森に響くような荒げた声を上げ問立てるラナ。その表情に少し恐怖を覚えてしまった。

「自信が、、、なくなったの……」

 少しずつ心を開いていこう、と思っていたが姉だからだろうか。すぐに安心してしまい心に込めていた思いをぶつけてしまう。

「私はあの時初めてキスをした。その相手がレイジで嬉しかった!レイジもきっとそう思ってくれてる。でもなぜだか考えちゃうの。ドキドキしていたのは私だけでレイジは別にドキドキしていない。あっちの世界でもう経験しているんじゃないか、って……!!!」

 ラナに負けないくらいの声で森に響かせる。それに合わせて森はざわめきだす。
作品名:〜アルティナ編〜第2話 作家名:零零