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移ろいの中で (1月9日 追加)

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大 家

空き屋になっていた一戸建てに今年も入居希望者がやってきました。
毎年一年契約で出て行くので、この一戸建ては毎年のように入居者が変わります。別段うちはそれでかまわないのですが、入居者の都合なのでいたしかたありません。毎年この時期になると入居者が現れまるで春の訪れを知らすかのようです。
この一戸建てはもう15年位前に作ったもので、暫く使わずにいましたが折角だからと入居者募集しましたところ、いつも夫婦で見に来られるのですが、どうやら玄関が広すぎたようで気に入ってもらえませんでしたので、思い切って玄関を狭めるとようやく入居者が決まりました。
昨日も新しい入居者の夫婦が家を見に来ました。
「ねえ、これでいいんじゃないの?」
「ん・・・古いけどな」
「古くても家具も付いているし、どうせ一年だから」
夫はあまり気乗りしない様子なので、私は「大丈夫ですよ、皆さんお使いになられていますから」とフォローします。
「そうですか?」と夫は信用しません。まずは外見を何度も見回し、安全な場所であるか確認しています。大事なことですね、子供を大きくするのに変なおじさんや強盗に入られる危険性があってはいけません。良く地域の安全状況を確認しましょう。
「ん・・・じゃあ中を見せてもらおうかな」夫は玄関をくぐります。嫁は外でそれを見ていました。
「中はなかなか広いですね」
「そうでしょう、これだけあれば十分ですよ」とご案内
「奥様とあと・・・子供は3、4・・・」
「ええ、それくらいを考えています。おい、お前も見てごらんよ」と夫が出ると新妻が変わりに入ってまいります。室内をキョロキョロ見渡し別に興味もないような仕草。
「住めば気に入ると思いますよ」と耳元で囁いてあげましたが、新妻はどこでもいいようでした。それよりお腹の子供のことが気になっているのでしょうか?
「ねえもうここに決めない?」と奥様の暖かいお言葉
「でもなあ・・新築も魅力あるし」とだんなはいま一つ気に入ってもらえません。どうも前の入居者の残していった家具が気に入らないのでしょうか?
「新しく家具をそろえると結構な手間も掛かりますから、どうです?これをリニューアル、今で言うリノベーションして使われては??」と私は営業をかけました。夫婦はなにやら相談していましたら
「別の物件も見てみたいので、また来ます」と言葉を残し帰っていくではないですか。
「知りませんよ、他の入居者がはいっても・・・」その言葉を聞くまでも無さく、さっさといなくなってしまいました。