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廃墟の街

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自由のために



いつものようにドアを開ける。

「ただいま」

返事がないのも気にせずに私は自分の部屋に行き荷物を置いた。
何か違っていた。なんだろう、
そう思いながら自分の勉強用机に座る。
まわりを見回す。
私は隣の椅子に座っている姉の存在に気づいた。
それはいつもとは様子が違かった。
寝てる? いや違う。なにかが。
机の上から見下ろすのをやめて
部屋の奥__姉の隣__に行って見る。

「あ」

机に突っ伏している私の姉はノートやら参考書やらを
ぐしゃぐしゃにしながら倒れこむようにして
机や椅子、床に血だまりを広げていた。
…………………………。
これは?
きっと、重大事件。
驚きながら自分の物を汚さないようにと
姉の赤い色のものから避けた。
普通だったら駆け寄って生きているか確かめるだろうけど
私はそんなことせずに自分のことしか考えていなかった。
自分は最低なやつだと笑いながら
逃げるように部屋を出ていった。


自分の部屋から出て、
リビングのドアに手を掛ける。

『……ギ』

「………………」

でも母や父にどうやって説明したらいいだろう。
そう考えるとドアをひらく手が自然に止まっていた。
私は今とても混乱している。
母や父もきっと混乱してしまうだろう。
そもそも混乱している私なんかが
上手く説明できるだろうか。
でも。
やっぱり知らせないと荒れたこの街では
次にまた何かが起こってしまう。
はず。
私もいつものように暮らしていくうちに
姉のように死んでしまうかもしれない。
せっかく姉のいない日々が過ごせるのに
それはちょっとあんまりなので知らせないといけないと
理由は酷いが思った。


ドアが開くと同時に自分の部屋に入ったときの雰囲気を思い出した。
料理の匂いも使っている消臭スプレーの匂いも
全て違う強烈な臭いにかき消されていた。


____________



部屋にはパソコンのキーボードを打つ音が響いている。

『カタカタカタカタカタカタ……タン』

「…………」

慌てながらキーボードを打つ私は
誤変換したり、押しすぎたりしながら
とりあえず急いでいた。
今私はメールをしている。
内容は今起こったことの相談。
こんなことを相談されても困るだろうけど
共有したらもしかすると不安が薄れると思って
震えながらもパソコンに向かっている。
一通り打ち終えると送信ボタンをクリックした。
ここはいつもより静かでいつもとは違う自分の部屋だった。
姉が死んでいて、それなのに呑気にメールをしている私が。
してはいけないことをしている私が。
存在してはいけない存在がいる部屋。
メールの返信を待った。
色々怖いとか不安だとか考えた。
物凄く長い時間のような気がする。
分からない。どうしてこの結果になってしまったのか。
どうしよう。

「ねえ」

「え……」

後ろから声がした。誰もいない部屋の外から。
私はその声を知っている。
開けたら殺されるんじゃないかな、
この状況。
作品名:廃墟の街 作家名:たこどん