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ACT ARME1

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「オラァ!どかねぇか!ぶち飛ばされてぇのか!」
 男とその集団はファミレスに入るや否やいきなりそう怒鳴り、やたらめったらものを蹴飛ばし破壊しながら席に着く。
「こらぁ!とっとと注文来いや!」
まあ、えらい有様である。他の来店客や店員は、そのヤンキー集団の暴挙を止めることはできず、ある人は食事を中断し、店の隅により、ある家族は子供が泣かないよう必死で静かにするようなだめていた。
この周囲の人たちのリアクションは至極当然といえる。何せこの集団はこの町でも凶暴凶悪で名をはせる、『ドン・ペリ』なのである。
犯した罪は数知れず、この世界における警察である治安部隊が取り押さえようにも、その治安部隊をぶちのめし、半年間の病院送りにしてしまう。誰も手の着けようがないのである。
少しでも気に食わないことがあれば女子供容赦なく手を挙げるので(しかもすぐ機嫌が悪くなる)、こいつらを見た瞬間、周囲の人たちは半径二十メートル以上は距離をあける。
ただ、中には例外もいるものなのである。
「あ〜ぁ、物語の始まりからこんな荒っぽくて大丈夫なのかねぇ?」
「え〜、いいんじゃない?別に。」
「それにしても、ジャイアニズムの権化のような人たちですね。」
「うるせーヤロー共だ、ったく。」
この、だれが見ても逃げるという選択肢をとる、泣く子も黙るこの状況で、のんきにデザートを突っついている四人組がいた。あまりに堂々としていたので、それまで誰も気づいていなかった程だ。
ドン・ペリのボスらしき男は立ち上がり、その四人組がいる席へと向かう。身長は優に二メートルを超えるような大男である。普通ならどうしようもなく怯えてしまうものなのだが・・・
「おい、おめぇら、何やってんだ。あぁ?」
「何って、見ての通りデザート食べてるんだけど。迷惑だった?」
物怖じ一つすらしていない。
「それにしても感心しないよね。ここに入ってくるなり中のもの破壊して、ちゃんと弁償できんの?それに、他の来店客をあんな隅に寄せて何様のつもりなんだか。ぱっと見、もうすぐ成人しそうに見えるけど、まだガキ大将やってんの?さすがに滑稽なんだけど。」
普通ならこんなことは言えない。絶対に。案の定、ボスらしきその男は今の言葉でプッツンきてしまったようだ。その様子を見て、四人組の冥福を祈る人まで現れた。
「ちょっと、ルイン。見るからに荒っぽそうなやつをそんな馬鹿にしちゃダメでしょ。」
「まあ、そうなんだけど。でも嫌いなんだよね。こういう威張り散らすことにしか能がない奴ら。」
「てめぇら、ぶち殺す!」
ついに男が最大限にまでキレた。懐からナイフを取り出し、ルインに向かって振りおろす。しかし、ルインはそれを見もせずに左手で止めた。右手では、自分のデザートである、バニラアイスを食べながら。
「ちょっと待った。今デザート中。相手ならその後でするから。なかなか食べないんだよ。バニラアイス。」
自分よりも二回りも小さい相手に、片手で難なく自分の攻撃を受け止められ、しかもそれを振りほどくこともできない。信じられない光景にボスらしき男以下、その場にいた全員が目を疑う。
「お前さあ、確かに腕力はあるみたいだけど、全然孔が使いこなせてないよね。そんなんじゃ僕にけが一つ負わせられないよ?」
「何だと?」
「今のこの状況からわかるでしょ。自分よりもはるかに弱そうな奴に腕つかまれて、何一つ出来てないんだから。というか、片腕掴まれてるんだったら、普通蹴りなり何なり反撃するでしょ。正直戦闘の経験とかほとんど無いんじゃない?」
その言葉に触発されたからなのか、それともそのとき初めて気づいたからなのか。ボスらしき男はもう片方の手で殴りにかかる。
だがその前に、
「でもそれはしない方がいいよ。そんなことしたら、お前が僕を攻撃する前に、この腕の骨折るから。とりあえず、みんなが食べ終わるまで待っててくれないかな。さっきも言ったけど、相手ならちゃんと後でするし。」
鋭く睨まれ、男は動きを止める。まるで、ヘビに睨まれた蛙のようだ。その状況のまま数分がたち、四人組全員がデザートを食べ終えた。
「さて、と。じゃあ、ここじゃ迷惑かかるから、外でやろうか。」
「おい、待てよ。」
「何?グロウが相手するの?」
「おう、久々だ。オレにやらせろ。」
「やれやれ、血気盛んだよね。グロウは。というわけで、こっちが相手するみたいだけど、それでも構わないかな。」
まるで、合コンで何かと仕切りたがる男が、お目当ての彼女に話しかけるような感じである。思いっきりなめられていることを肌で感じていた男は、精一杯凄んでくる。
「てめーら、全員地獄で後悔させてやる!」
「おぉ怖。まあ、がんばって。」
そう軽く受け流し、ルインは立ちあがった。見るとその左腰には刀が携えられている。ルインだけではない。グロウと呼ばれる男(こいつも結構体がでかい)の手にもハンマーが握られている。他の二人、眼鏡をかけヘッドホンをつけた、いかにもパソコン大好きそうなオタ系少年と、まるで水兵帽のような帽子をかぶった普通の女の子は何も持っていないようである。
店の外に出たグロウとボスらしき男は、お互い向き合う。
「おい、おめぇそのハンマーは使う気なのか?」
「あぁ?別にどっちでもいいだろ。てめーの強さを見てオレが決めっからよ。」
「ふん、おめぇはそのハンマーを使わずに」
男は突進してきた。
「死ぬことになるけどな!!」
そしてその大きな拳で殴りかかってくる。瞬間、その手の中から釘のようなものが現れ、それをグロウの眉間に叩き込んだ。野次馬たちから悲鳴が上がる。
「うわー、せこーい。」
「そういっちゃ悪いですよ。アコさん。あのナイフはどうやらああやって使う隠し武器のようですから。」
「でも、あれだけ図体でかいくせに、そんな攻撃しかしないなんてせこくない?」
「まあ、いいじゃないですか。そのせこい武器をくらって、倒れるようなグロウさんではないんですから。」
その言葉通り、ナイフはグロウの眉間に確かに命中しているのだが、全く突き刺さっていない。
「なんでえ、期待はずれなことしやがって。おまけにこんなもん使ってこの威力かよ。情けねえにも程があるぜ。」
グロウの眉間からナイフが離れる。そこには、一滴の血も流れていない。反対に、男の指は殴った反動で折れていた。
「がっ・・・・あああ!?」
「ルインが言った通り、てめーまったく孔を使えてねえな。そんな奴にこいつを使ったら殺しかねねぇから、これで我慢してやる。」
そういうとグロウはハンマーを置き、軽く一発男の頭にこぶしを当てた。
本当に、軽く頭をこつん、と小突いただけである。しかしその瞬間、男の体は数メートル先まで吹き飛ばされた。
「グロウ、やりすぎ。」
「あ?力は抜いたぞ?」
人々があっけにとられている中、突然悲鳴が上がった。見ると四人組のうちの残りの二人が羽交い絞めにされている。羽交い絞めにしているのはドン・ペリの一味のようだ。
ただ、悲鳴を上げたのは二人ではなく、野次馬の中から上がったようである。
「動くんじゃねえぞ、てめぇら。このお仲間の首が飛ぶことになるぜ。」
作品名:ACT ARME1 作家名:平内 丈