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香水(コスモス4)

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香水


 幸田未來の「愛のうた」の着うたが部屋に鳴り響いた。携帯電話のアラームを止めるけれど、頭がぼーっとしたまま半ば夢の中だ。それでも、私は這い蹲るようにして重たい身体を起こす。
 時刻は五時半。隣に目をやると、あんなに大きな音でアラームが鳴ったにもかかわらず、アツシはまったく気付いていないようで、気持ちよさそうに寝息を立てていた。その様子が、少しむかつく。
 布団をめくると、少し寒気がした。ベッドの下や上やに散らかった衣類。とりあえず下着を探したけれど、ブラジャーが見当たらなかった。たぶん、アツシの下にあるのだろう。以前もブラジャーがなくなったとき、アツシの背中の下で見つかった。ワイヤーが入ってごつごつとしているのに、どうして気付かないのだろうか。そのブラジャーはずっとアツシの体重に押し潰されていたために、形が歪んでしまっていた。またそうなのかと思うと、うんざりしてくる。
 部屋にもともと置かれていたバスローブを羽織って、シャワールームに入った。シャワールームの壁がガラス張りになっていて、向こう側に寝ているアツシが見えた。私は、それがとても嫌いで、いつもは死角でシャワーを浴びるのだけれど、今日はアツシが完全に寝ているので気にせずに真ん中でシャワーを出した。熱いお湯が身体を打って、ようやく目が覚めた気がした。
 学校の予鈴がなるのは八時四十分。ここを八時に出れば間に合う。学校までは、電車で四駅ほどだ。
 シャワールームを出ると、丁寧に髪を乾かした。背中まで伸びた明るい茶色の髪に、時々櫛を通しながら丹念にドライヤーの温風を浴びせる。この作業が、すべての動作で一番好きだ。
 いつも洗面、化粧、そして髪のセッティングで軽く二時間が過ぎてしまう。髪は、キレイにストレートにした後に、コテで巻くのが日課だ。私はいわゆるオネエ系という系統に分類される。自分にはそれが合っていると思うし、それを求める男が多いこともよくわかっている。
 七時が過ぎたくらいに、携帯電話が鳴った。メールの着信音。コテ作業の途中だったのを一旦中断して、携帯電話を取りにベッドルームへ戻った。相変わらずアツシはまったく気付く様子がなく、そのまま寝ている。メールの相手は静香だった。

 おはょ(≧∀≦)タカゃんのやつ忘れるなョ!!
作品名:香水(コスモス4) 作家名:紅月一花