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超短編小説  108物語集(継続中)

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「じゃあ、佳奈、もう乗らないと」
「そうね、宇宙船に帰らないとね。またしばらく会えないけど」
 佳奈が涙声で答えた。
 そんな佳奈を拓馬はぎゅっと抱き締めた。そして熱いキスを。

 これはこの遠距離恋愛のいつもの儀式だ。新エレ幹線の最後尾のドアの前で、二人は再会の約束をするかのように唇を合わせる。
 ドアーがシュワーという音とともに閉まった。窓の向こうの佳奈が口を開き、何かを言ってるようだ。拓馬にはそれが聞こえない。しかし、佳奈の口の動きでわかる。
「お・よ・め・に……い・く・か・ら」と。

 これに対し、拓馬は男の決意を込めて、ひと言ひと言しっかりと口を開く。
「き・み・を――、し・あ・わ・せ・に――、し・て・み・せ・ま・す」

 佳奈が乗った新エレ幹線、その後すぐに軽快な音とともに、上へ上へと昇って行ったのだった。