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超短編小説  108物語集(継続中)

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「その通り、だけどどうしても秋はピークで、10キロ増えるんだって。それにこの現状維持は椿子課長から俺への特命事項なんだよ、とどのつまり結果が出なければ、ボーナス減額されるんだよな、そこで雑学王の浩二様にお伺いで、どうか妙案を俺に授けてくれ」
 私は必死のパッチで手を合わせました。
 すると友は「少々のパワハラは受けて立たないとお前の出世も閉ざされるからな。お前とは未確認生物発見同好会からの付き合い、だから特別に教えてやろう、食欲の秋に打ち勝つためには――白から黒猫――だよ」と澄まし顔で宣いました。

 私はグラスを持ったままポカーン。
 その15秒後、枝豆を三粒口に放り込み、「リーダー、その白から黒猫って、新種ですか?」と学生時代にワープしたような反応をしてしまいました。
 すると浩二は「ああ最近わかったんだよ、若尾若尾山(にゃおにゃおやま)に生息してることが。その猫の好物は人間の意地汚い食欲、つまりだぜ、欲そのものをむさぼり食うらしいぜ」と一気に話し、あとは「そいつを捕まえて、お前の上司にプレゼントすればいいんだよ」とどや顔。

 私はこの奇想天外の展開に返す言葉が見つからず、なるほどと相づちを打つしかありませんでした。
 しかし考えてみれば、ちょっと変。「白猫と黒猫って、二匹は結構手間じゃないか?」と疑問を投げかけると浩二は言い放ちました。
「白から黒猫ってのは一匹だよ。最初は白猫だけど、人間の食欲を喰うことにより黒猫へと変身していくんだよ。どうだ、衝撃だろ」
 私は思わず眉に唾を付けました。
 この振る舞いを目にした浩二、「今度の日曜日、白から黒猫、一緒に捕まえに行くぞ。これは直樹のためにだ」とえらい剣幕で吠えました。
 私は友の善意を断れず、「ヨロチクね」と返すしかありませんでした。