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超短編小説  108物語集(継続中)

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 いやはやあっちもこっちもの同朋が、つまりシルバー世代が奇人になってしまった。これは一体どういうこと? それにしても何か楽しそう! 達也は取り残され感を覚えた。

 そして一ヶ月後、妻が「あなた、インスタで何か発信しないと、孫たちからも忘れ去られてしまうわよ」と神に成り代わり救いの手を差し伸べてくれた。

 しかし達也は理解できない。「何なの、それ?」と聞き返すと、「写真SNSよ。斜め前の奥さんも隣のご主人も、今、定年後の生きる糧はインスタなのよ。あなたも老人から早く奇人に進化しないとダメね」と諭された。
 この妻の誘導に、達也は一念発起、ハッシュタグきらめく世界への移住を果たしたのだった。

 ああ、それにしても嵌まってしまった!
 そのワールドとは――#macro_pradise(接写天国)。
 とにかく花や蝶、それに虫、これらをマクロレンズで微細写真を撮る。掲載言語は英語とし、世界中からのフォロワー数10Kを目指している。

 しかし、事はそう簡単ではない。写真はまるっきりの素人。インスタグラムに投稿されてくるプロのような写真には遠く及ばない。
 それでも腕を磨かなきゃと、今日も今日とてちっちゃな虫にカメラを近づけて接写に無我夢中。

 その結果、町内で最近噂になっている。
「あそこのオッチャン、この間公園の地べたに這いつくばって…。可哀想にあの年齢でね、奇人になってしまうなんて、ホント人生何がどうなるかわからないものだわね」と。

 かくの如く、フォト奇人、ただ今シルバー世代に――増殖中! なのだ。