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超短編小説  108物語集(継続中)

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 ハアーハアーと息を切らせて、女と一緒に雪崩れ込んだ事務所、意外や意外、部長が前に立ち、朝礼中。
「こら、遅巻、おそまきながら出社なんて言うなよ。惑星衝突は誤報だ。いいか、うちの社名は早井だ。もっと猛スピードで走って来い」

 部長からいきなりドカーンと、惑星の代わりに雷が落ちて来た。これは理不尽だ。だがクッソーと唇を噛む耕介は無視され、「さっ、お嬢さん、みんなに紹介しましょう」と部長は茶坊主のように微笑み、手招きをしてるではないか。
 俺が救った泣き黒子のかわい子ちゃん、一体どうするつもりなんだよ、とムッとすると、部長からさらなる言葉が。
「課長が転勤に。その後任として、米国でMBAを取得され、ベンチャー企業を渡り歩いて来られた女史…」

 これに合わせて、女性は前へと進み出た。そして、まるでアスパラガスのように突っ立って、自己紹介をする。
「早井詩琴と申します。仕事は猛スピードで、これが私のモットーです」
 えっ、えー、ということは、早井一族のお嬢さん? それにしても猛スピードの早井詩琴って、早い仕事ってこと?

「今朝は早速、遅巻君に、少し荒っぽかったですが、助けてもらい無事初出社できました」
 おいおいおい、なんで俺のこと、君付けなんだよ? ということは……、俺の新しい上司?

「巧遅は拙速に如かず、業務はこの諺通りに推し進めます。だけど法の遵守、つまりコンプライアンスだけはしっかり守ってくださいね。例えば遅巻幸介君、早く強制睡眠チップを、その雑念一杯の脳に埋め込みなさい」


 今朝、いつも通り駅に行ったら、泣き黒子の可愛い女が寝ていた。あわよくば恋人にと、猛スピードで頑張った。
 その女が早井詩琴で、法遵守を命じる上司になるとは……、なんだよ、これ!
 幸介はこんな支離滅裂な展開に、ガーン!

 それにしても、あ〜あ。
 もし、これが夢ならば――猛スピードで、覚めてくれ!