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超短編小説  108物語集(継続中)

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 夜はいつも通りに明け、月曜日の朝を迎える。
 朝8時、名古屋駅新幹線ホームは黒っぽいスーツで身を固めたサラリーマンたちでごった返している。そんな中に、五十路(いそじ)を越えた、人生も佳境であろう一人の女性がのぞみを待っている。そして目を走らせる向かいのホームに男がいる。それは紛れもなく夫だ。

 ビジネス戦線への出陣なのか、ピリリと身が引き締まっている。だが、その勇姿とは不釣り合いだが、キャリーバッグの上に紙袋が置かれてある。
 夕べ、駅前のホテルで妻から渡された肉じゃがなどが詰まったタッパーが入っている。
 妻の由美子は京女、そして夫、貴志は東京生まれ。今年銀婚式を迎えるこの夫婦、典型的な東男に京女だ。

 貴志は今大阪に単身赴任中。役職にも就き、まことに忙しい。そのためそうそう家族が暮らす東京へとは帰れない。一方由美子は子育て真っ最中であり、猫の手も借りたい。
 こんな二人が時々、東京と大阪の中間点である名古屋で会う。仕事や日々の暮らしの煩わしさを忘れ、二人だけの時を過ごす。そして月曜日の朝、西と東にそれぞれが帰って行く。

「あなた身体に気を付けてね」
 由美子が貴志に向かって口をパクパクと動かした。当然貴志はそれが読み取れる。「ああ、そっちもね」と声を発せず答えた。
 そして由美子は「じゃあーね」と小さく手を振り、あとは無表情で、8時03分発ののぞみ106号に乗って行った。

 たったそれだけのことだ。
 しかれども、名古屋駅の新幹線プラットホーム、そこは男と女の交差点。
 語り尽くせない愛のジャーニーの途中に、男と女はのぞみに乗ってやってきて、それぞれの思いを抱いて、再び東西へと去って行く。