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超短編小説  108物語集(継続中)

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 その彼らとは今まで一度も言葉を交わしたことはない。されど互いに見知った仲。これを友人と言うべきなのだろうか、それとも仕事場へと向かう同士と呼ぶべきなのだろうか? いずれにしても馴染みの顔が揃っていることで、慌ただしい通勤がのどやかなものになることは事実だ。
 もちろん彼らも静穏。目を閉じ、走り行く快速電車の響きを感じ取っているようだ。

 そんな彼らを、薄目を開けて確認してみる。いつもの面々だ。そう、ヒグマのようなオヤジに、ちょっとずる賢しそうなキツネ顔のお姉さん、そしてキリンのように背の高いお兄さんに、ヤケに着飾った孔雀のような熟女、とにかく……、等々だ。

 ならば自分は?
 さしづめ彷徨うはぐれ狼ってとこか? こう自虐的に思い、小さくプッと吹き出す。それでも彼らは瑛太に怪訝な顔をするわけではなく、慣れた世界に浸っている。なぜなら電車という小さな檻に入り、もう何年も通勤を共にしてきた朋友だからだ。

 それでも瑛太は、これってちょっと危険な段階かな、とも案ずる。