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超短編小説  108物語集(継続中)

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 こんなメカニズムに気付いた洋一はさらに考えを巡らす。
「もし今の俺が、郁子をこちらへと引き抜かず、そっと元へと戻せば、五〇年前に郁子は消えずにいられる。そして普通通りに暮らして行けるはず。ということは、家族の今までの過去は、これで変更できるかも知れない、いや、きっと変えられる」と。

 洋一は覚悟を決めた。現在へと半分姿を現す郁子を引き抜かず、元の五〇年前へと押し込めた。そして、ふうと大きく息を吐いた。

 その時だった、襖がスーと開いた。これに洋一が振り返ると……、そこに佇(たたず)んでいた。
「お兄さん、私も実家に帰って来たわ。お母さんが大事にしていたお雛さん、今年も飾ってくれた?」

 もうすぐ還暦を迎えるという――、ちょっと太めの郁子が微笑んで、こんなことを訊いてきたのだった。