小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

超短編小説  108物語集(継続中)

INDEX|154ページ/761ページ|

次のページ前のページ
 


「故郷のシュークリーム、もう一度食べてみたいと言ってたでしょ。だから、行ってきたら」
 なぜか突然、真希が悲しそうに囁いた。だがそれで直樹は背中を押されたのか、出掛けることにした。

 母子家庭で育った直樹、暮らしは貧しかった。それでも中学時代までは楽しかった。高校生活は味気なく、振り返りたくもない。なぜなら高校受験で直樹の心に刺が刺さってしまったからだ。

 それでも電車の揺れに身を任せていると、あの時のことが蘇ってくる。直樹はメランコリックな気分となるが、電車はそれでも駅へと到着した。

 ホームに降り立った直樹が目にした風景、それはまさにかってのままだった。
 そう言えば、あれは高校卒業と同時に、忸怩(じくじ)たる思いを抱きながら、このプラットホームから町へと向かう列車に乗った。それからずっと都会で暮らしてきた。

 そして今、恋人の真希がいる。そろそろ結婚をと思うが、ちょっと躊躇している。踏み切れない理由は自分でもよくわかっている。なぜならシュークリームの出来事が払拭できないからだ。