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超短編小説  108物語集(継続中)

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「なるほど、おじいちゃんが話してた箸って、こういうものだったのか」
 ネット内の紹介文と言い伝えを読み終え、北林は腑に落ちた。それから割り箸で、コンビニ弁当の縁にぺちゃりと貼り付いたカマボコを剥がし口に入れる。どことなく、よくわからないがプラスチックの味がするような気がする。
「あーあ、今宵のディナー、俺も『うまんまの箸』、使いたいよ」

 こんな願望が吹き出した時、北林はハッと思い出した。
「そう言えば、おじいちゃんが……、幸介、お前の人生の、ここぞという時には元気出すために、美味い味が必要だろ。だからその時には、この『うまんまの箸』を使えと言ってたよなあ」

 確かに、形見としてもらっていた。
「あの箸、どこへ仕舞ってしまったかなあ?」
 すぐさま引き出しをひっくり返す。そして、ラッキー! 見つけたのだ。
 神々しく光る箸、手に取るとずしりと重く、神懸かり的な趣がある。
「おっおー、これで弁当のカマボコも新鮮アワビになるぞ! すべての食事がミシュラン三つ星級に――大変身じゃ!」
 感極まり、こう叫び、パソ画面の前にまたドッカと座る。そして今度はエビ天を挟み上げ、そろりと口に入れる。そこでじっくりと味わえば良いものを、普段の流れか、左手で缶ビールをグビグビと。

「えっ、このエビ天、まるでゴム輪のような食感。『うまんまの箸』で、ぜんぜん美味くならへんやーん」
 そう、それはまさに単身赴任の侘びしい味なのだ。
 北林は期待が外れ、メッチャ不満。あとは一人ムカッときて、エビ天を前歯でカチカチと。