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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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金木犀の薫り

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消えたマリア


マリアと別れて2日が過ぎた。
僕はマリアに電話をしなかったしマリアの方も電話ををかけてはこない。
芸大志望の生徒のことで僕の頭は一杯であった。
生徒の絵を見ながら僕はマリアのスケッチを画布に描き変えていた。
「先生の子供」
「モデルさん」
「先生独身よね」
「うん、そうだよ」
「芸大卒業したらお嫁さんになってもいいかな」
僕は冗談と解っていたから
「待ってるよ」
と返事した。
そして、マリアの口座に金を振り込もうと思った。
結婚の言葉に反応したのかもしれない。
放課後なので短時間の外出は出来る。
ATMでいくら教えられた番号を入れても口座はなかった。
僕は直ぐに携帯で電話したが呼び出し音がするだけであった。
いずれ、マリアと家庭を持ったら、ゴンとマリアと僕で旅をしながら絵を描いていこうと夢を見ていたのに・・・
マリアとの別れを意識した。
2日後手紙が届いた。マリアからであった。

家は引き払いました。
いままで誰1人拒まれた事の無い私だったのに、好きになった人に拒まれて知ったの。
きっと好きにならせて見せる。時計はお借りします。あなたと思うから・・・
さようなら


金木犀の枝が入っていたが、花はなかった。なんの香りもしない枝であった。
あの時僕は教師であることを・・それが理性なのかと今になって後悔した。
強く抱きたかった。一人の男になりたかった。
ゴンはどうしたのだろうか?
授業が終わり、僕はマリアの家に車で行った。
本当に空き家になっていた。
僕は金木犀の木がある公園に行こうと思った。
車を降りて歩きながら金木犀を見たが、もうどの木にも花は残ってはいなかった。
前からゴールデンが歩いてきた。通りすがりに犬は僕の方に寄ってきた。
「ごめんなさい」
中年の婦人は軽く謝った。
どの犬も似て見えるが、僕はゴンだと思うのだった。
僕が預かっても良かったのに・・・・

作品名:金木犀の薫り 作家名:吉葉ひろし