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海野ごはん
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ハロウィン神戸

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「ハロウィン神戸」

神戸で交際後初めての夜を迎える中年の男と女
宝石をちりばめたような夜景が広がる眺めのいい部屋での一夜の物語







絡めあう指が離れる時、裕美子は名残惜しくて思わず自分から拓夫の胸に顔を埋めた。
広いベッドの中央に仰向けに寝ている拓夫の体に覆いかぶさり、黒いシャツを1枚通して感じる肌のぬくもり、広い胸板に頬を押し当て拓夫の普段より速いだろうと思われる鼓動が聞こえた。


 裕美子と拓夫が夜を共にするのは初めてだった。
2ヶ月前に同僚から紹介され、すでに数回デートしていたのだが、お互い年齢の割には映画に行ったりドライブしたりと健全な付き合いをしていた。離別歴お互い1回の人生経験者の割には、かわいいデートを繰り返していた。今更、また人を愛することには少し抵抗があるが、やはり、心のどこかに寂しさを埋めてくれる異性が欲しかったのも嘘ではなかった。

 うぶな少年少女じゃあるまいが、やはり男女の仲になるには、それなりのステップを踏まないと出来ないと思ったのは裕美子も拓夫も同じだった。
いきなりのキスや肉体関係を持とうと思えば持てるかもしれない。だけど残りわずかな人生であろうとも、ゆっくりと絡んだ紐を解くように、一つずつの行動を納得した形でお互い楽しみたかったのだ。
絡んだ場所をほどく作業がお互いの思い出になるであろうというのはわかっていた。それは、長年沁み込んだ二人の昔のパートナーを消してゆく、あるいは塗り替えていく作業に近かった。別れた相手を否定しない。だけど、二人の関係をよりよくしようと思うのならば地味な作業でもあるが、プロセスを跳び越さないで、一つずつ正面切って、目の前の相手と小さく並んだブロックの目を塗り替えていくことが正解のようだと感じていた。


作品名:ハロウィン神戸 作家名:海野ごはん