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天空詠みノ巫女/アガルタの記憶【零~一】

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(でも、少しばかり目立ち過ぎたのかもしれませんわ……)
 サヲリは気がついていた。先刻からもう一人、この屋上に潜んでいる存在があることを……。
 意を決し――そして半ば呆れながら、その者の名を呼んだ。
「そんな所で何にをしていらっしゃるのかしら、神月さん?」
「ぎくっ!?」
 その声は、空調の室外機の奥から聞こえてきた。
「ハーッハッハッハッハー! ばーれーたーかーらーにーはーしょうがない!」
 同時に陰から、一人の華奢な女子生徒が勢いよく飛び出してきた。
 ショートカットの明るい髪に猫科を思わせる目元が特徴的な、一見、可愛らしい感じの少女……神月織子(コウヅキ オリコ 十七歳)であった。
 サヲリは、その気配が神月織子のものであるとまでははわからなかった。だが、こんな場所で身を隠し、自分の行動を覗き見る者を他に知らない。
 うんざりするほど有り過ぎる心当たりが、彼女の名を言い当てた確信であった。
 クラスこそ違ってはいたが(サヲリはA組。織子は隣のB組)、気がつくと視界の外にはいつも彼女の存在を感じ、その視線は痛いほど突き刺さってくる。それはまるで、サヲリの行動を監視するかのようであった。
 ここ最近、更にそれは顕著なものになってはいたが、彼女の正体や目的を知るうえでもあえて放置し、むやみな干渉は避けていた。
 現に、これまでは直接的に関わってくることはなかったし、そのことによって、万一不測の事態を招いたとしても、サヲリには充分対応できる自信があった。
 たとえそれが、『あの娘(コ)の親友』という殻を被っていたとしても……。
 だが、今日の織子はこれまでとは完全に違っていた。
 別段、悪びれた様子もないまま徐にサヲリの前へと立ちはだかると、持っていたデジタルカメラを構え、唐突にシャッターを切り始めるのだった。
「そろそろ本当の自分を曝け出して貰おうかな?……容姿端麗、質実剛健、才色兼備、頭脳明晰、学業優秀?えー……あと、あと、スポーツ万能……えーと、牡羊座のA型で、振った男子は今日で十六人目?だっけ?……しかーし、神谷サヲリの私生活は分厚いベールに閉ざされ一切謎!果たしてその実態やいかに?高校生探偵、神月織子……またの名を『名探偵オリリン』が、その全容を解明するのであったー!っと……お、いいねーその表情!いいよー!最高だー!今度はちらっと上着を脱いで、こっちのアングルから、ガバーッといってみよーかー!」
 耳障りなシャッター音とやりたい放題の織子に対し、サヲリはワナワナと込み上げる怒りに打ち震えていた。
(この手の女子は苦手ですわ……)
 サヲリはふと、視線を上空へと移した。
「あ!見て見て!あれ、UFOー!?」
「えっ?どこ?どこ?」
 その隙に、サッと織子からデジカメを取り上げた。
「あー!うそつきー!!」
 サヲリはすぐさま、メモリーにざっと目を通していく。
「どれどれー……ずいぶんと撮りましたのねー、私ばかり……」
 言った先から、次々とデータを消去していった。
 取り戻そうにも小柄な織子では、割と背の高いサヲリに翻弄されて成す術がなかった。
「あー!あー!バックアップ取ってないのにー!」
「――とは言っても……」
 最後には本体からメモリーカードを抜き取り、それを指で折り曲げる。
「あーもー、最悪ぅ……。苦労して集めたのにー!」
 織子は口を尖らせながら、その場にへたり込んでしまうのだった。
「よく撮れてましてよ。でもね、あなたの行為は立派な犯罪ですの。次こんなことをしたら、ただでは済まさなくってよ」