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Aufzeichnung einer Reise01

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ブリューゲス大陸を東国カイセルリッケス帝国が統一して3年がたった。
平和に包まれるブリューゲス大陸に、しかし魔の手は近づいていた。
                                
   ☆     ☆     ☆

~Prologue~

ブリューゲス大陸の東端、山間にある小さな村。
一人の青年が星空を見上げて大きなため息をついた。
青年の名前はミカゲ=フリューフリング。村で一番の強さを誇っており今宵、晴れて21歳をとなった。
「…つまんねぇ。」
ぼそりと呟いた言葉は闇の中に消えていく。
ミカゲは不満だった。こんな小さな世界ではなく、村を出てもっと大きな世界を観てみたい。この大陸には今、シャドウと呼ばれる異形の化け物が数多く出現しており戦う手段のない者が街の外の出るのはとても危険ではある。だからごく稀に向かう帝都までの道のり以外の世界をミカゲはみたことがない。大きな世界をみるために村一番と言われるまで強くなったのだ。だのに村のみんなは村を出ることを許してくれない。これでは何のために自分は剣の腕を磨いたのだろうか。
鬱々とした思考は小さな音によって遮られた。
「…?誰だ?」
ミカゲの問いかけに応えたのはこの村の村長、そしてミカゲの育て親でもあるメイラであった。
「また考え事してんのかいアンタは。」
メイラの苦笑交じりの問いかけにミカゲはついと視線をそらす。
「俺は村を出たい。大きな世界を見て回りたい。…なぁ、なんで皆許してくれないんだ?俺、シャドウどもにやられるほど弱くないつもりなんだけどな。」
空を見上げるミカゲの目が考え込むように細められる。メイラは思わず目をみはった。
「それともやっぱ、皆にとっては俺はまだまだ子供でしかねぇのかな。」
やれやれと首を振るミカゲにあぁ、大きくなったなぁとしみじみと思ってしまった。
「……じゃあ行ってくるかい?」
すさまじい勢いでミカゲが振り返る。その目は大きく見開かれていた。当然だろう。今まで村を出ることは冗談でも許したことはなかったのだから。
「…本気で言ってる?」
「当たり前じゃないか。冗談でこんな事言えないさ。」
ミカゲは面白いぐらい混乱している。普段自分のペースを崩すことが少ない分こういう姿は珍しかった。
「で、でもなんで急に…。」
「21歳だろう?去年はあげてないからね。成人の分と合わせての誕生日プレゼントだよ。」
納得がいかないという顔で眉根を寄せるミカゲにメイラは優しく微笑んだ。
「お前ももう大人だからね、いつまでもこんな村の中で満足できないのは当然さ。それにね…」
メイラはいったん言葉を切り目をつむった。
「いつか許そうとは思ってたんだよ。ただ危ないからと理由をつけていただけ。でも…アンタは私が思っている以上に成長してた。だからもう私には止められない。」
言葉の出ないミカゲにメイラはにっと笑って見せる。
「行っといで、ミカゲ。でも絶対に、戻ってくるんだよ。」
背中をポンと叩いてメイラは家へと戻っていく。ミカゲはその後ろ姿を、ただ見つめる事しか出来なかった。

      ☆    ☆    ☆
~第1章~

村の皆に盛大に送り出されてミカゲは村がある山を下りていった。旅をするのに必要なものはメイラが用意してくれている。だが夏真っ盛りの今、山の中とは言え気温は素晴らしく高い。
「山下りちまったらますます暑いんだろうなー…とさてどうするか。」
考え込みながらメイラが持たせてくれた帝国の大まかな地図と近辺の細かな地図を見比べる。
「んー。ダス・グランツまではまだまだ遠いし…先にどっかよって水調達したがいいかもな。」
ミカゲはそう結論づけると村がある方角へと歩き出した。地図が正しければその村の近くには川があり水もたっぷりあるはずだ。
すさまじく暑いが陽光の差し込む林はさわさわと涼やかな音を立てている。その音を楽しみながら歩いていると突然シャドウのものとしか思えない咆哮がひびいてきた。
「っ!!!」
思わず腰の剣を抜いて身構える。シャドウは現れない。だが相変わらず咆哮は聞こえるし木々が折れる音まで聞こえている。剣を構えたまま耳を澄ませばシャドウの咆哮と共に微かな水の音を聞き取ることができた。
「…地図でみた村が近いのか?」
ならば襲われているのは水を汲みに来た村人だろう。ミカゲは慎重に音のしたほうへ進んでいく。
水の音や咆哮が近くなる。次の瞬間突然林が開け、流れる川と人型で大型のシャドウの背が目にはいった。
「ぅわでか。面倒くせー…」
シャドウをみた瞬間思わず本音がでてしまった。確かに面倒くさいが村一番の剣士の称号は伊達ではない。おそらくあのサイズのシャドウなら倒せるだろうから倒すべきだろう。
はぁぁぁ…と大きく溜息を吐くとシャドウに斬りかかろうと足に力をいれた。その時だった。素晴らしい速さで矢が飛びシャドウをかすって隣の木に突き刺さった。
「っ外した…!ルーナ、走れ!!」
悔しそうな声とともにシャドウの正面側から弓を手にした少年が走り出てくる。茶色に碧眼の少年…いや、青年なのかもしれない。とにかく、その少年は左手に弓を持ち右手にいかにも戦えなさそうな金髪の少女を連れて走っていく。少女は今にも転びそうで放っておけばすぐに、二人ともシャドウにやられてしまうだろう。さすがにそんな事態は避けたかった。
ミカゲは急いで林を飛び出しシャドウを追いかける。走りつつ石を拾い、シャドウへと投げつけると同時に剣を振り上げ人ならば肩甲骨のあるあたりへと思いっきり切り込んだ。
「ヴォォォォォォ!!!」
シャドウは怒りの咆哮と共にミカゲを認識し狙いを2人組から切り替える。
「ぅおわっ!」
いやな予感がして慌てて飛び退るとさっきまでミカゲの体があった場所をシャドウの腕が勢い良く通り過ぎていく。
「あっっっぶねぇぇぇぇ…。」
喰らったらただでは済まないだろう。ミカゲはそう判断するとちょこまかと走り回ってシャドウをほんろうする。
シャドウが再び腕を空振りさせた瞬間ミカゲはシャドウの懐に飛び込み胴体部分を両断する。
「ウ、ゴァァァァァ!!!!」
最期の咆哮と共にシャドウの下半身がくず折れる。上半身は切断の衝撃で林のほうへと飛んで行った。いまだ痙攣している下半身に容赦なく剣を突き立てミカゲは身を翻した。林のほうへ行き上半身にとどめを刺そうと思った時、矢が飛んできてそれに突き刺さった。
一本、二本、三本刺さって矢は止まった。
そばにいたミカゲをかすることなく矢を飛ばした少年は先ほどと同じく左手に弓、右手で少女の手を引いて林の陰から出てきた。
少年はミカゲに向かってぺこりと頭を下げる。
「危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございました。」
「ありがとうございました!」
少年に続いて少女が頭を下げる。どうやら二人とも礼儀正しい性格のようだ。
「別にかまわないよ、ついでだったし。」
嘘ではないが本当でもない。面倒だのなんだの思っていた自分はこの際隠しておくことにする。
「あの、よかったら僕らの村までご案内しましょうか。何かお礼もしたいですし…。」
おわぁ礼儀正しいなぁ。心の声は表に出さずミカゲは少し考え込んだ。
作品名:Aufzeichnung einer Reise01 作家名:虎猫。