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エイユウの話 ~夏~

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「ああ、いたいた」
 突然現れた年配の声に、四人は驚かされる。発信源のほうを見てみると、明の導師が手を振っていた。彼女は齢五十八という、導師としてはなかなかの高齢の人だ。白髪交じりの紺色がよく似合う女性である。廊下で足を止めて、その場で大声で要件を告げる。
「アウレリア・ラウジストンさん。心の導師様がお呼びよ」
 思い当たる節がないらしく、アウリーはきょとんとする。
「お父様が?」
 そう確認しながら、明の導師のほうへ歩き出した。しかし急いでいたのか、導師はまた大きな声で続きを話す。
「だいぶ前から探していたから、なるべく早く行ってあげてね」
「解りました」
 辿り着く前に駆けていく明の導師を見送ると、「ちょっと行ってきます」と彼女は職員室に向かって行った。長い草に足を取られながら歩く彼女は、いつ転んでもおかしくないくらいふらふらだ。
 その背中を心配そうに見るラジィが呟く。
「親子の会話かしら?」
「家でやんじゃねぇの?そういうのは。っつーか、急ぐ必要ねぇだろ」
 全く関心がないようだ。キサカが適当に答えて、ごろりと草むらに寝転がった。草に埋もれて、近くにいないとキサカがいることと解らない。不機嫌になったラジィを見て、キースが慌てて話を続ける。
「成績の話かな?」
「それも家庭内会話だろ」
 キースの気遣いに気付けず、キサカがサクッと答えた。この学園に留年はない。学年は存在するが、あくまで「学園に何年いるか」という指標で、卒業資格所持者と非所持者という区分くらいだ。ラジィはため息をついてキサカをにらむ。しかし怒りは収まったのか、すぐに彼にならって、そのまま大きな木の下に寝転んだ。キースも重心を後ろに移し、ボスっと草むらに倒れこむ。勢いよく寝転がったのに、まったく痛みはなかった。横目で隣に寝転がる二人を見るだけで、今のキースは幸せを感じることができる。
 ふと見上げた空に浮かぶ入道雲が、さっきよりも大きく見えた。帰るまで天気がもつだろうかと、平和な不安が頭をよぎる。それでもこの幸せにつられて、まあいいかとキースは大きくあくびをした。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷