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紀州藩下級武士の妻・をちえの一代記である。をちえは、江戸の生まれで商家育ちである。紀州藩邸青山御殿に夫・貞輔の父・吉田小兵衛が詰めていた時の御用達・舛屋冶平の娘で、吉田家の家運を興隆するのに功があった。その苦労が解き明かされている。御用達商人と藩侯との利害の絡みあいが維新の成功の秘密でもあった。をちえは、その工作の一端を果たしたのである。