隣人部「学園都市?」 または、とある世界のはがない
夜空と猫2
翌日、夜空は先生に呼ばれて特別教室に向かっていった。
能力の事を専任講師の小萌先生に話したら
嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら
「そうですか~とうとう三日月ちゃんもやったのですね~!
私は精神操作系は専門外なのですがとにかく凄い事なのです~!
羽瀬川ちゃんも、クラスの皆さんも彼女を見習って頑張って下さいなのです~」
俺を含めたクラスの皆も、何だか勇気づけられたかのように
その後の「時間割り」を精力的にこなすようになった。
その日の放課後、少し遅れて夜空が部室にやってきた。
「夜空のあねご。のうりょくかいかおめでとうございます」
幸村が讃える。
「クックック、我が配下に新たなる能力者が加わったのじゃな」
小鳩、いいからちゃんと祝ってやれ。
「うむ、この能力は「猫群掌握(キャッツマインド)」と命名しようと思う」
「ふふーん・・・その程度なんてレベルはたかが知れているわね」
星奈はまるで勝ち誇ったかのように言い放った。
「バカか肉は。
精神操作系は数ある能力の中でも、特に優れたる者だけに許されるのだ。
ちなみに私はレベル4相当だ」
「何ですってぇ?たかが猫を操ってレベル4?あり得ないわよバカね!」
「いいや、バカはお前だ肉め。私の能力は確かに猫の制御に特化している・・・
しかし調査の結果、猫の知能を擬似的に人間レベルまで向上させたり
私の意識そのものを猫に部分的に預けたりも出来る事が分かったのだ。
つまりどういう事かというと、猫を使って自在にスパイ行為をしたり
人間の労働の肩代わりをするのも可能なのだ!
どうだ肉・・・貴様などせいぜい風でゴミをまき散らす事しか出来まい。
ありふれ過ぎていて二束三文の空力使いなんぞより
よっぽど貴重で高等な能力なのだ!」
「言ったわねぇ~、このバカ夜空!じゃあどっちが真にレベルが高いか勝負よ!」
言うなり星奈はたちまち手から風を生み出し、部屋中が旋風に包まれた。
夜空も「かかれ!」と言い放つと、いつの間に入って来た猫が星奈に襲いかかる。
部屋中が旋風と猫の大群でメチャクチャになりそうになり
「うわああああーーー!お前ら喧嘩は外でやれーーー!!!」
俺は思わず叫んだ。
そのまっ只中で幸村が、冷静な面持ちで部屋の壁に手を当てると
一瞬にしてそこが外へ出るドアに変わった。
「夜空のあねご、星奈のあねご。しょうぶの続きはこちらから外にでて
行っていただけますでしょうか」幸村は厳かに二人に言う。
二人は能力使用を一旦収め、肩を怒らせながらそのドアから外に出て行った。
そして幸村が再びドアに触れると、ドアがまた一瞬にして元の壁に戻った。
「幸村・・・やっぱその能力すげえな」俺がつぶやくと
幸村は「はいっ」と微笑んだ。
・・・外から何やら轟音と叫び声が聞こえるのは空耳だろういやそうだと信じたい。
そういえば結局、今日で俺と理科とマリアを除いて隣人部の全員が能力に開花し
しかも全員レベル4相当なのである。
まあマリアや理科はそもそも能力開発を受けていないのだから相当な高確率だ。
話に聞くところによれば、この学園でもまだレベル4相当の能力者は
ここに居る4人以外には居ないのだから、なぜ隣人部だけこんなに居るのか、
考えてみたらもの凄く不思議だ。
そういえば理科は、夜空の能力談義が始まってあたりからどこかへ行ってしまった。
まあ徹底した能力否定主義の理科にしたら
今の隣人部はとても理解できないものだろうな、と思うのだ。
・・・全身傷と埃まみれになった二人が戻って来たのは、それから2時間後の事である。
作品名:隣人部「学園都市?」 または、とある世界のはがない 作家名:航宙市民