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ユウキヒロ
ユウキヒロ
novelistID. 41813
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マリオとマリーと殺人計画

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 松井はそんな小林の心中を全く察することもなく、勝手にさっさと呼び出しボタンを押して店員を呼び、ビールの大ジョッキ一つと中ジョッキ一つ、そしてピーチティーを注文した。さらに一人でメニューを眺め、どうしようかなぁ等とぶつぶつ言っている。松井が太ったとは言え、その知性は健在であろうと期待していた小林だったが、早くも不安になってきた。まるで重大な仕事上の決定をするかのように真剣に居酒屋のメニューを眺めている松井の姿は、お世辞にも知性的には見えなかったからだ。いや、はっきり言って愚者に見える。
 そんな小林の心中を察してかどうか、未だ名も知らぬ美少女が口を開いた。
「おい、小林が怪訝な表情で見ているぞ。メニューばかり見ていないで、少しは何か話したらどうだ。大体、小林は昔の友人なのだろう。大昔の友人であれば、変わりきった松井太郎の姿に驚いているのではないか」
 その言葉に小林は驚いた。何故初対面の自分の名前を知っているのか。さらに、どう見ても小学生のその少女が、初対面の自分を呼び捨てにするという、その口の聞き方。だが最も驚いたのは、まるでその少女は、心を読んだかのように小林の心情を言い当てたことだ。確かに小林は、変わり果てた松井の姿に驚いている。いや、この男は松井ではないのではないかと、疑ってさえいるのだ。
「ああ、そうだね、ごめんねカズちゃん、メニューばかり見てて」
「いや、いいんだ」
 本当はよくはない、失礼な奴と思う。
「カズちゃん驚いちゃった?ちょっと太ったから」
 ちょっとじゃない。
 飲み物が届いた。松井は飲み物を届けた店員に向かって、勝手に次々と注文していく。店員が去ると、とりあえず乾杯する3人。ものすごい勢いでビールの大ジョッキを飲む松井。ちびちびとかわいくピーチティーを飲む美少女。シュールな絵だった。
「ぷはぁ。やっぱり仕事の後のビールは最高だねカズちゃん」
「そうだな」
「そうそう、今日は、カズちゃんに見せたいものがあるんだ」
 そう言うと、松井は照れくさそうな表情を浮かべた。
「実は僕、こんな感じなんだ」
 言いながら、松井は自分の頭を取り外した。彼はヅラだった。何故今なんだ、何故このタイミングでそんなことをカミングアウトするのだ。小林は呆然とするしかなかった。松井はヅラを再びつけると、うけなかったなぁ・・・と、しょんぼりしている。小林は思う、俺は、こんな男に人生の最も重大な相談をしようとしていたのか?松井が勝手に頼んだ食べ物が次々に運ばれてきた。
「カズちゃんも勝手にどんどん食べていいから」
 そう言いながらもの凄いスピードで豚のように皿を空にしていく松井。少女は相変わらずかわいらしくちびちびと食べている。
「なぁ松井・・・この子は、誰なんだ?」
 対面してから大分時間が立ってから、やっと聞けた。聞かなくても、もはや想像はついているが。そう、小林自身は子供がいなかったからここに来るまでは考えてもみなかったが、43という年齢は子供がいても全くおかしくない年齢だ。
「ああ、そうだね、まだ紹介してなかったね。じゃあマリオ君、自己紹介してごらん」
 小林の目の前にいた美少女はマリオと呼ばれた。マリオは自己紹介を始めた。
「松井マリー11歳、神ノ木小学校5年。この太った男が私の父親のようだ。目を背けたくなる事実だが。父は一人で行動すると危なっかしい故、今日は私が保護者としてここに来ている。小林のことは父から聞いている。高校時代の親友で、今日は父に相談があるらしいな。こんな男に相談と言うのも珍しいが、まあ高校時代はまともだったらしいからな」
 そう言うと、少女は再び沈黙した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ松井、意味が分からない。松井は今この子をマリオと呼んだ。この子は自分のことをマリーと言う。だがどう考えてもこの子はマリオではないだろう。女の子なのだから。松井、お前、自分の子供の名前を間違えるなよ」
 間違ってない、とでも言いたげに、松井はぶんぶんと首を振った。
「それは私から説明しよう」
 少女は言った。
「父は必ずしも間違っているわけではない。私の本名は松井マリオだ。父にはマリオの名前で呼ぶなと言い聞かせているが、昔の癖だろうな、時々こうして間違ってしまう。酒など入っていると特に間違うようだ」
「お、女の子なのに『マリオ』という名前が本名?センスが悪いとは言わないが、珍しいな」
 ふぅっ、と少女は息を吐いて、言葉を続ける。
「そう、確かに私は女だが、生物学上は男なのだ。両親が私を間違った性別で生んだのだな」
 小林には何がなんだか分からなかった。娘の言葉を受け、松井が言葉を続ける。
「カズちゃん、マリーちゃんはね、おちんちんがついてるの。男の子なんだよ。でも小学生に上がった頃から自分は女だって言い出して。それで、今では女の子みたいに髪も伸ばしているし、名前も変えちゃったし、服も女の子の洋服を着ているんだ」
 小林は驚きに目を見開く。この美少女が、本当は男?
「それで、僕は未だにたまにマリーちゃんに怒られるんだ。間違って男に生むなんて、ドジだって。ママには言えないから僕にだけ怒るんだ。ずるい」
 なんなんだこの親子は。
 小林は、そのままその親子としばらくの間、思い出話に花が咲くことも全く無しに、ただ酒を飲み、つまみをつまんだ。松井は牛のように食い、マリーは小鳥のように食べていた。

3

 松井は酔ったらしく顔を真っ赤にして、このあいだ和牛をどれだけ食べたかなどと、わけの分からない自慢話を延々としていた。マリーは小学生らしく玉子焼きをつまんだかと思うと、一転ほっけを注文したりしている。
 そうしてしばらく飲んでいると、マリーは相変わらず真面目な表情を崩さず、大人に対する例の平然としたタメ口で言った。
「小林、そろそろ、相談というのをしてみたらどうだ」
 急にその話題を振られて一瞬動転したが、もはや目の前のこのデブに真剣な相談をするつもりはなかった。小林はあいまいに返答をしてごまかそうとしたのだが。
「なるほど、父があまりにも頼りない様子であるため、相談するのをやめてしまおうと考えているわけだな」
 マリーは小林の心を読んだかのように、するどい突っ込みを入れてくる。それではと、わざと当たり障りの無い会社の仕事の相談などをしてみるも、マリーはあっさりと、そんな相談をしたかったのではないはずだと見破った。聞けば、しゃべっている時の視線や表情、汗のかき方などで、人が何かをごまかそうとしたり嘘をついていたりといったことが分かるらしい。
「マリーちゃんに嘘はつけないよ」