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アジュンマ~、今日の晩ご飯なに?から始まるつまんない小説

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おれは目の前が真っ白になった。

そして急いで部屋で寝ているトゥギヒョンを起こしにいった。
「ヒョン!ヒョン!今日からまたお手伝いさんが代わるって知ってた?!」
まだ寝ぼけ眼のトゥギヒョンがおれの顔を見てあくびをしながら言った。
「ああ~、そうらしいな」

「し、知ってたの?!なんで教えてくれなかったの??」
おれはまた眠ろうとしているトゥギヒョンのパジャマを掴んで揺さぶった。
ヒョンは面倒くさそうな顔をして金髪の髪をくしゃくしゃとかいた。
「臨時だからしょうがないじゃないか。状況が急に変わることもあるさ」
「だからって・・・なんで昨日言ってくれなかったんだよ!!」
おれの態度を見て、トゥギヒョンがやっと目を覚ました。
「ドンヘ・・・お前・・・」

「もういい!」

おれは部屋から飛び出して下の階のヒョクチェの部屋へ行った。
ヒョクチェは朝からランニングに行ってていなかった。
おれはヒョクチェのベッドにもぐりこみ、ショックを抑えるのに必死だった。
「ドンヘ?入るぞ」

トゥギヒョンの声だった。ヒョンはおれを追ってきていた。
おれは布団を頭から被ってベッドでうずくまった。
トゥギヒョンはベッドの横に腰かけて、布団の上からさすっておれをなだめた。
「そんなにショックだったか?ヌナがいなくなったこと」
おれは涙が出てきそうで唇を噛んだ。
おれは彼女のことが好きだった。

これが恋愛感情なのかはよくわからないが、とにかく好きだった。
だから色々聞きたかったのに。これから彼女のこともっと知りたかったのに。年齢すら知らないのに――。
「うーん、しょうがないんだ。ヌナに頼まれたんだよ。寂しいから誰にも言わないでくれって。笑ってお別れしたいからって」
おれは布団を思い切りはいでヒョンを見た。
「本当に?本当にそう言ったの?」
「ああ。だから昨日の夕食は豪勢だっただろ?あれは全部ヌナが自分で食材も買って用意してくれたものなんだ。最後だから
みんなにお礼がしたいからって。みんなの笑顔が見たいからって。おかしいよな、お礼しなきゃいけないのは俺らなのに・・・」
おれはそれを聞いて堪えていた涙がぶわっと出てきた。
トゥギヒョンはおれの頭を優しく撫でてくれた。
ひどいよ、おれに何ひとつ言わないで消えるなんてさ・・・
いっぱい、いっぱい、話したいことがあったのに・・・


あとで聞いた話だが、彼女の年齢は29歳。日本人とのハーフで管理栄養士。知り合いに頼まれて、今回家政婦の手伝いをしてくれたらしい。
本当は大学の研究室に在籍していて、栄養素の研究と食育教育を専攻しているそうだ。
まるで家政婦とは不釣合いな彼女の本当の姿。
だよな。だって最初会ったときも、全然家政婦に見えなかったもん。
29歳・・・

ヌナとアジュンマの微妙なところだな・・・(笑)
だから言いたくなかったんだろうか、なんて考えながらおれは空を見上げた。
ソラさん・・・いつかまた会えるといいな。
その時は、ちゃんと「ヌナ」って呼ぶから・・・




イ・ヒョクチェ



「ヒョ~クチェ!ゲームしようぜっ」
またドンヘが俺の部屋へやってきた。これで今日3回目だ。
「もう飽きたから一人でやれよー」
俺はベッドに寝転んで天井を見上げた。
「じゃパソコン借りるぜ~」

俺はゲームに夢中になっているドンヘの後姿を横目で見て、また天井を見上げた。
ふ~。ここ最近楽しいことがないなぁ~。
ソンミンヒョンは日本にいるヌナとこの前久しぶりに会えたらしく、今まで以上にラブラブのご様子。
仕事が落ち着いたので、いつもネットで顔を見ながら話している。うらやましい・・・たまには俺にも話させて欲しい。
ジョンウンヒョンは、今彼女がいるのかいないのかわからないけど、バブトルズが好調らしく2号店を検討中で物件を探している。
パソコンの前でいつもニヤニヤしてて楽しそうだ。
シンドンヒョンは、去年から付き合ってる彼女と旅行に行ったり、なにかと上手く遊んでいる。そしてなぜかそれがバレない。
ぜひ伝授してもらいたいものだ。

リョウクは相変わらず曲作りにハマっていて、ほぼ毎日ピアノを弾いている。たまに中学時代からの彼女が遊びに来て二人で
料理を作って俺達に振舞ってくれる。この子だったらリョウクと結婚させてもいい。
ギュヒョンは・・・・言うまでもない。彼からオンラインゲームを取ったら何も残らない。最近新しいゲームに没頭してて、またこれが
なかなか強敵で、あのギュヒョンを苦戦させている。だからギュヒョンはより一層、目を血走らせてクリアに躍起になっている。
ドンヘは・・・・

半年前に長いこと付き合ってた彼女と別れて、今は何も考えたくないようだ。
別れてからしばらくは会話の中によく元カノの話が出てきたけれど、最近は全く出てこない。
多分吹っ切れたわけじゃない。考えないようにしてるだけだ。だって、ドンヘは本当に彼女のことが好きだったから・・・
そんなドンヘを知ってるから、やっぱりほっとけない。だから一日何度も俺の部屋に来ても追い返したりしない。
そして俺は・・・

さかのぼってみると、もう2年以上彼女がいない。
少し前に好きになった人はいたけど、残念ながら人のもの。
仕事はありがたいことにレギュラーもあるし順調だけど、やっぱり彼女がほしい・・・
でも今のドンヘにそんな話をするのは気が引ける。
「おいヒョクチェ、明日の夜仕事ある?」
ドンヘがゲームしながら突然聞いてきた。
「明日の夜?ドリームチームのロケが終わったら何もないよ。でも何時に終わるかわかんないけど」
「久しぶりにさ、ご飯食べに行かない?」
ドンヘが夜に俺を外出に誘うのは本当に珍しい。
俺は酒を飲まないので、基本ドンヘは飲みに行くときはヒチョルヒョンとが多い。
彼なりに俺に気を使って、「酒」ではなく「ご飯」と言った。
きっと飲みたい気分なんだろうな。
「いいよ。飲みに行こうぜ。俺は飲めないけどさ、たまにはクラブにも行きたいし」
ドンヘが嬉しそうな顔をして振り向いた。
「まじで?クラブ行く?!」

「ああ、いいよ。でもマジで何時に終わるかわかんないよ。遅くなっても平気?」
「ぜーーんぜん、平気っ!待ってるから!」
ドンヘの嬉しそうな顔を見たら、俺も自然と笑顔になった。


翌日は朝からドリームチームのロケ。今日は本当に寒いっ。
わざわざ見に来てくれているペンの子たちも大変だろう。
しかも収録時間は長いし。本当にいつもありがたいなと思う。
今日も当然のことながら収録が押して、終わったのは午後10時だった。
これから宿舎に戻っても深夜0時近くになる。
俺はドンヘにメールをした。

「今、終わったよ。宿舎に着くのは0時くらいになると思う。それでも大丈夫か?」
速攻返事がきた。

「うん。待ってる」

いつもならたった1行のメールでも、ドンヘは必ず絵文字や顔文字を入れてくる。
でも今日はこの一言だけ。

なんかあったのかな?俺はなんとなくそう思った。
俺が宿舎に着くと、ドンヘは俺のベッドの上で横になっていた。
なんだよ、待ちくたびれて寝ちゃったか。
そっと近づくと、ドンヘは涙を流したまま眠っていた。
左手には折れた携帯の半分の欠片を持って。