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KMJストーリィ―Attachment of sixty―

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「愛してる。……もし俺がそう言ったら、お前はどうするつもりなんだ?」
「…………」
光すらも前進を阻まれる歪み。空間の断絶に隔てられそうになりながら、最後の映像に向け、少女は必死に微笑んだ。
伝えたいものは涙ではない。今、胸を襲う痛みなど、誰にも分からなくて構わない。
「……酷い言い様だね」
「それは返事じゃないな」
ジジッと立体画像が揺れ、こちらを睨む男の姿が消えそうになる。
どれほど臨場感をもって三次元の空間に像を描いても、それは本物ではない。分かりきった事実にも関わらず、その瞬間、男の手は少女を求めて空を裂いていた。
――腕が届けばいいのに。
ほんの少しだけ願ってしまう。けれど、そんな望みは叶わない。
ジ、ジジ……ジ…………ジジッ。
先程よりも派手に男の姿が揺れ、歪んでいく。
「もし。……もしも」
声が出ない。間に合わないかもしれないのにと、少女は自分を叱咤した。
伝えていい言葉かどうかすら分からない。けれど、考えをまとめる時間はない。
揺らぐ視界。眩暈を堪えて、視点を定めようとする。見たい姿が徐々に見えなくなる。
「……もしも、ね」
――言ってもいいの?
きっと今でも思い悩むけれど。
「…………。そうしたら、教えてあげる……」
もしも。
──もしも、六万年分の一瞬を捕まえることができたなら、その時には。

そして、男の姿は、少女の視界から消えた。