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私の好きな歴史の中の悪女たち~東流・古今東西おんな談義~

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以前から、このようなタイトルでエッセイを気ままに書いてみたいと考えていました。
 今、世の中は歴史ブームです。
 特に〝歴女〟と呼ばれる歴史に興味を持つ女性たちが増えています。
 私もたぶん、そのたくさんの歴女諸氏の一人ではあるのだろうけれど、
 私は歴史研究家でもないので、これからお話しすることは、あくまでも趣味で拾い集め
 た知識の域を出ず、もしかしたら、あまり史学的には正しくないこと含まれるであろう
 ことはご理解頂けると、幸いです。

 さて。
 まず、最初に取り上げたいのは、日野富子と張嬉嬪(チャン・ヒビン)。
 このエッセイでは私の知っている日本と韓国の女性を対比するという形で話を進めて
 みたいと考えています。
 日野富子を知らない方は恐らく少なくはないのではないでしょうか?
 室町幕府の将軍足利義政の奥さんで、足利義尚のお母さん。
 日本史では〝悪女〟と呼ばれる女性の中に入る人です。
 でも、何故、富子が悪女なのでしょう?
 確かに、彼女はそう言われても仕方のないことをしました。
 将軍御台所でありながら、金貸しまがいのことをしたりしましたよね。
 また、女の身で将軍である夫そっちのけで、政治にも口を出しました。
 まさに、男が嫌う出しゃばり女の条件を立派に備えています。
 でも、見方を考えれば、富子は悪女ではなく、むしろ女傑と呼ぶにふさわしい
 女性なのではないかと私は考えます。
 ここでは、歴史的背景などの説明はしません。
 とりあえず、皆様、ご存じのものとしてお話します。
 でも、簡単にお話ししておくと、富子の生きた時代というのは、もう、本当に幕府も
 ゆきづまって、どうしようもないところまで来ていました。
 おまけに、夫は無能で、政治に関心はない、趣味は庭いじり。
 義政は造園にはプロなみの才能を見せたと言いますが、将軍がプロの庭師はだし
 でも、正直、何の意味もありません。
 そういう意味では、義政も可哀想な人でした。
 つまり、義政も富子も生まれてくる時代や場所を間違えたのです。
 無能で無関心な夫に代わって、富子が強くなるしかなかった、男並みに活躍するしか
 なかったーそんな感じがしてなりません。
 今の時代であれば、賞められることをしても、室町時代に生まれたばかりに、
 悪女呼ばわりされる、そんな気がするのです。
 また、応仁の乱を起こしたともいわれる富子ですが、これもどうなんでしょう。
 時代の流れというものは、誰にも止められないものです。
 足利尊氏に始まった室町幕府も義政の頃になると、既にかなり退廃が進んでいました。
 最盛期はとうに過ぎ、転落の一途を辿っていたのです。
 幕府の衰退は将軍の権威の失墜に他なりません。
 そんな風潮が、果たして一人の女人に止められたでしょうか。
 確かに富子の言動が不穏な空気をあおったといえないことはないでしょうが、
 応仁の乱もまた歴史の流れの中での一つの出来事であり、
 もはや、誰をもってしても止めることはできないものであったのではと思います。

 これは時代劇、歴史小説にもいえることですけれど、
 同じ人物でも、どこに焦点を当てるか、どの角度から見るか描くかにより、
 随分と浮かび上がってくるイメージは変わってきます。
 また、今、私たちが知る歴史はあくまでも勝者側が書いたものであり、
 敗者から言わせれば、また別の言い分があり、歴史があると思えます。
 どちらの立場に立って描くか、どの部分に光を当てるかによって、
 一つの時代、歴史的人物、事件でも何通りもの描き方ができるということです。

 なので、私は普段から歴史は必ずしも〝これだ!〟と断言できるものではないと
 考えています。
 確かに現代に伝わっている歴史的事実は一つでも、様々な可能性が秘められていて、
 絶対にそれが真実だとはいえないと思います。
 まあ、一つの歴史的事件に定説ーいわゆる、これが正しいといわれている説の他にも
 様々な傍説があるといえば良いのでしょうか。
 もしかしたら、私たちが定説だと信じている説こそが誤りであり、
 傍説だと歴史家が歯牙にもかけないような説が真実もしれません。
 歴史の醍醐味はそこにあり、ロマンもまた、色々と可能性を想像できるところに
 こそあるのだと思います。

 歴史小説はそういう意味で、歴史のその謎の部分に光を当て、新たな可能性のある
 物語、ドラマとして再生させるものです。
 なので、あまりに破天荒な筋書きは別として、基本的には、どんなストーリーであっても
 良いのではないかと私は考えています。
 もしかたら、大胆な仮説を真実として描いていくうちに、新しい発見があって
 それが実は正真正銘の真実だったなんてことになるかもしれませんしね。
 よく、どこそこの遺跡で幻のナントカといわれていたものが見つかった
 なんてニュースが報道されます。
 仮に、その時代を舞台に小説を書いている真っ最中だったら、実は存在したものを
 存在してないもののように描いていたということになりますね。
 でも、その人が書いているときは、そんなものは存在しないとされていたのだから、
 全くの間違いではないし、逆に、ありもしないものをあるとして描いたら、
 歴史研究家からはバッシングを受けることになりかねません。
 物好きにも、人の作品を読んでアラを見付けては突っ込みたがる人は意外に多いもの
 です。
 でも、今度は逆に、そんなものはありえないと描いていたのに、執筆途中で、発見され
 てしまったら、今度は、真実だったものが嘘になってしまう。
 つまり、やはり、歴史なんてものは絶対はありえないということです。
 状況や新しい発見がある度に、書き直されていくものなんですから。

 少し回りくどいお話になってしまいました。
 お話を歴史上の女性に戻します。
 私は韓流ドラマが大好きで、よく見ます。
 韓国ーかつての朝鮮王朝時代にも、悪女と呼ばれた人たちが存在しました。
 朝鮮で〝三大妖婦〟として名高いのが彼の暴君燕山君(ヨンサングン)の側室
 であった張緑水(チャン・ノクス)、後は仁祖という国王のやはり側室であった
 金尚宮(キム・サングン)、それに粛宗という国王の側室であるチャン・ヒビンです。
 今回、取り上げるのはチャン・ヒビン。
 日本でも韓流ブームでドラマを見る方も多いので、もしかしたら、聞き覚えのある
 名前かもしれません。
 私が朝鮮王朝史に興味を持つきっかけになったドラマが〝妖婦 チャン・ヒビン〟。
 身分の低い女性が国王の心を射止め、側室から王妃にまでのぼりつめた、いわば
 悪女版・シンデレラストーリー。
 最後は、あれほど愛された夫である王に、毒薬を無理に流し込まれて死ぬ
 という壮絶な最期は心に残りましたーあらゆる意味で。
 このチャン・ヒビンも確かにしたことを思えば、悪女と見なされても仕方ない部分は
 あるのですけれど、やはり、時代の犠牲者といえなくもありません。
 チャン・ヒビンの本名はチャン・オクチョン。
 一介の女官からまず淑媛スクウォンという最下級の側室になりました。
 しかし、これだけでもたいした出世です。