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海野ごはん
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novelistID. 29750
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あなたとロマンス

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「なんだか…どうしたの?」
「ねぇ~、このままホテルに入ろうか。どこか探して・・・」
 大胆な彼女の言葉は今に始まったわけではない。僕はそれが好きで付き合ってる面もある。
しかし、今日の彼女はどこか思いつめた表情で言うものだから僕は冗談で返す言葉が見つからなかった。
 白亜のモダンなホテルを見つけると僕はそこのパーキングに車を停め、チェックインした。
 いつもはドアを締めるとすぐにお互いキスをするのだが、彼女はベッドにうつぶせに倒れ込むと死んだように身動き一つしないでじっとしていた。
 何かに心が押しつぶされてるようだ。
 どこかに棘が刺さっているのはわかるが、どこに刺さっているのかわからないもどかしさと焦燥感で普通の状態でないのが分かった。
「どうしたの?」 
 僕は彼女の隣に腰掛け、覆いかぶさるように彼女の体を抱いた。甘い匂いがした。
 振り向いた彼女は僕の顔を黙って見続けると、急にキスを求めてくる。
 柔らかい温かい舌が何かを求めるように僕の中に入ってきた。戸惑いながら応える自分がいる。
 言葉に出せなく、感情をあらわにしたキスだった。
 棘のささくれが僕にも痛いとわかる。
 心配した。
「不倫って痛いよね。ズキズキしちゃう・・・」
「・・・ごめん、悪かったかな」
「あなたのせいじゃないけど、やっぱりあなたのせいよ」
「好きになってごめん・・・」
「いいの。好きになってくれてありがとう。だけど、なんだか辛いね。仕事抜け出してきてしまった」
「いいのか?」
「勤続25年、男の事で仕事を投げ出すのは初めてかな・・」
やっと彼女に笑顔が戻った。
だけど、その笑顔はどこか悲しくどこか投げやりのようだった。


 笑顔が戻った彼女はそれから,昨夜の夫との出来事を話し始めた。
 それは愚痴にも似た彼女の心の奥に秘めた我慢の限界が臨界点に到達したと云う、どこの夫婦でもありそうな話だった。
「ねえ、好きなら私と一緒に住まない?」
「・・・好きだけど、ごめん一人がいいかも」
「それって、遊び?真剣じゃないの?」
「いや、真剣に好きだけどひとりがいい」
「淋しくないの?」
「淋しいから君に逢いたくなる。だから真剣に好きなんだ」
「それって真剣て、言わないわよ」
 僕は彼女の体を引き剥がすと、立ち上がり海が見える窓際に歩いた。簡単なベランダには陽光が一杯だった。
 そしてアルミサッシの窓を開けると、冬の冷たい空気が澱んでいた部屋の中に遠慮なく入ってきた。
 太陽は彼女と付き合う以前から、眩しく、優しく、そしてシンプルだった。
 ベッドに腰を下ろした彼女は顔を両手で隠し泣いていた。
 時計の針は午後2時半を少し回っていた。
 冬の午後、僕達はそれから何も言わずベッドの中でお互いの愛を確認し合うように抱き合った。


作品名:あなたとロマンス 作家名:海野ごはん