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待ち合わせ

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昼過ぎから鳴り出した雷。
 雨粒はまだ落ちては来ていない。突然、光が走り雷鳴がする。だから余計に怖い。いっそ雨がすぐにでも降り出せば、『夕立』だと思えばいいのだが、雨で膨れた雲は重たげにまだ頭上に追いついてはいない。
 このまま雷鳴がやんでくれれば良いのだが、待たせたな! とでも言いたげに雨は降りだした。でかい穴が開いているようなジョウロで水を撒いているかのようにトタン板ならまだしもアスファルトに当たる音を響かせた。
 そのうち、ザァーっと独特の音とともに幾筋もの雨の矢を落としてきた。はてバケツを幾つ用意してやってきたのだろうというくらい雨が降り続く。
 何度も部屋のカーテン越しに外の様子を伺う。昼間から夕方のように暗い空を見上げ、溜め息をつく女がひとり。
 久し振りに会う友人との待ち合わせ時間を気にしながら空とドレッサーに映る自分を見る。土砂降りならばひるがえるようなスカートは不向きだが、女性らしい柔らかさは失いたくない。今日会う相手はそういう人だ。
 時間いっぱい、そろそろ出かけなければ遅れてしまう。待たせるタイミングも何度かで心得た。

 会い始めた頃、待たせては失礼とばかりに早めに出かけたときのこと。
「待たせてしまったね。ごめん」
相手も待ち合わせ時間よりも早く来たにもかかわらず謝らせてしまった。
「ううん、待つのは平気」
「あ、そう……」
何故あの時「ううん、今来たところ」と可愛げに言えなかったのだろう。
相手が「かっこつかないな」とぼそりと呟いたのが聞こえてしまったのだ。
 少し遅れるマナーがあることを学んだ。

 晴れているのであれば、夕暮れの風景が綺麗なこの時間。今日は、傘を差して出かける。
 擦れ違う人、追い越していく人の傘の色がグレー一色になりそうな風景に彩りをつける。昨今、便利さ手軽さで増えつつあるクリアな傘はやはり味気ない。ひとの姿を見せることにはなるが、傘骨が何とも色気を削ぐ。クリアな傘は、映像を邪魔しないテレビの旅番組用かと思っていたくらいだ。
 相手との待ち合わせ場所は、道の途中だ。喫茶店や公園、駅前などでは人目がある。こっそり会いたいのだ。だからといってどちらか、あるいは双方に紙の契りをしている人がいるわけではない。まだはっきりと恋人として付き合っているわけではないのがその理由。
知り合いに会って冷やかしの言葉でも言われてしまったら、このままで終わってしまいそうな関係なのだ。
 
――あの二筋目の角を左に折れて、あのレストランカフェの裏側辺り――

 雨が上がった。
 その人の愛車が、停まる。
 ドアを開けると笑顔のその人が覗いた。


     ― 了 ―
作品名:待ち合わせ 作家名:甜茶