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小渕茉莉絵
小渕茉莉絵
novelistID. 40515
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最後に笑うのは誰だ―3

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「それでは、今月の集会を始めます。」

土屋家では毎月1回、本家と分家代表が集まり、企業や一族をまとめる集会を行う。本家の言う事は絶対。そして、会社をまとめる重要な会議だ。その司会を、次期社長である社長の息子が行う。

「まずは、今月の会計報告から……」

本家敷地内の大きな屋敷。一番前で分家代表を見るようにいる本家関係者。それを見る、核家族化した分家の代表約五十。そして、何故か本家側にいる、健太郎。ちなみに流星の母・恵知も夫である流星の父・葵のそばにいる。
昔の日本のように、土屋一族は男尊女卑だ。しかし、恵知は集会に参加している。その理由は、前当主に、長女である恵知、そして次女である美知しか産まれなかったからである。

前に挙げたように、土屋家は男尊女卑故、次期当主は当主の長男しか継げない。そういうしきたりある。焦った本家は、分家で一番、俗に言うデキル男を恵知に嫁がせたのだ。美知は一般男性と結婚した。
よって”当主の血をひく分家“となり、五十ある分家のトップに君臨した美知だが、表向きにも成功している姉に嫉妬し、ノイローゼ状態になり死んでしまった。
更に、分家当主である健太郎の父も死んでいる……故に、分家当主の息子であり、一番高貴な分家の健太郎も、その位置にいるのだ。

『闇の……出番だ。見ていろ、流星。』

健太郎の含み笑いに、土屋家最高の当主になるだろうと謳われる流星や、そんな息子を持ち、鼻高々の恵知や夫であり土屋家当主の父、そして主席側近であり恋人の朱音は気付かない――

「まずは、当主の挨さ――」
「ちょっと待った!」

集会はいつも当主(といっても、現当主はほぼ恵知に操作されているが)から始まるが、それを阻む声が聞こえた。健太郎だ。

「また、お前か。」
「またはねぇだろうよォ、次期当主のりゅーせーさーん。」

母親たちがそうであったように、息子たちも犬猿の仲だ。先の朱音の、流星に対する注意でわかるだろう。片や当主の息子。片やそれを憎む後継二位。
健太郎は、集会の度に流星と対決をし、それに勝つことで流星を次期当主の座から引きずり落とそうとしていた。土屋の学は、勿論他と比べれば高いが、その中でも健太郎は単細胞……と言っては彼に失礼だが。

「なんだ、また勝負か。何を何度やっても俺のが上!実際お前もそれで大怪我して、入院したじゃないか。」
「お前だってその綺麗なツラに傷つけられて先生に大手術したそうじゃないか。朱音、そうだろ?」
「さぁ?」

朱音が、アメリカのコント番組で見るようなリアクッションを見せる。

「夫婦そろって嘘つきか。よっしゃ流星!勝負だ!朱音、今度は手ぇだすなよ!」
「おい、健太郎……!」
 
健太郎の周りが歪む。これこそ、土屋一族が守り抜き、秘めてきた力……
 

 “属魔法”



「それで、死んだのね?朱音。」 

集会翌日。本家母屋。当主とその妻・成人していない当主夫婦の子供が住む所だ。当主と次期社長の秘書の職場もここにある。ちなみに当主の子供は成人したら本家敷地内にある別の建物に住むのがしきたりになっている。

「はい……社長。恵知奥様。」
「恵知……やっぱり英を許してやってくれないか。健太郎の属魔法で使用人も死んだことだし、ここは、丸く……」
「何をお考えですか!何のために、たかだか分家の貴方と結婚などしたとお思いなんですか。英を認めたのも、隠してきたのも私の寛容な心のおかげでしょう。」
「そ、そうか……」

おかしい……恵知の言葉をそう感じた朱音は、「では」と言って夫婦の間を去った。恵知の言っていることは、どこか正しくて、どこかおかしい。要するに、自分の亭主をたてておきながら、馬鹿にしている。この女性の性格からして分からなくもないが、結婚を望んだのは自分では?と思う。
自分と流星では、難しいことだから。

『いつも思うけれど……』

“英”って、何者?

「浮かない顔だな、朱音。」

母屋の廊下歩き、流星のいる事務所に移動しようとした朱音は、有り得ない人物に声をかけられた。


「健太郎……」
「呼び捨てか。たかだか秘書の分際で、当主の俺に。」
「分家でしょう。傷も痛々しいわね。包帯が似合う。」
「頭のいいヤツは、これだから腹が立つ。」

本家母屋は、代々守衛を務める分家の許可がないと入れない。たとえばそれが、次期当主の流星であったり、秘書の朱音であったり、長年仕える使用人であったりするので、何故か離れに住む健太郎は、さすがに門前払いのはず……朱音はそう解釈していた。実際、ここで健太郎と会うのは、初めてである。

「貴方も火系。流星も火系。流星の方が、力が勝っているのは、日々修行している貴方でも、分かった事でしょうに。」
「オンナ心と秋の空。」
「使い方がおかしい。」
「言ってくれんじゃん。なんなら、昨日のクソ使用人のようにしてやろうか?朱音。」

朱音は、目を見開いた。