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Choice ~チョイス・その3~

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 手紙が届く回数は少ないが、電話はほぼ毎日掛かってくる。
 
 なぜ、今になって?

Pm1:25

 昼休みを終えて、仕事に戻った頃、秘書から連絡が入った。

 また、元原告の父親からかと思ったが違った。

「ダニエル、警察の方が。」

「警察?…ああ、分かった。電話をつなげてくれ。」

「いいえ、もうここにいらっしゃるんです。」

 警察がなぜ?
 何の用だ?

「分かった。ここへ案内してくれ。」

 少ししてから、ドアをノックする音が聞こえた。

「失礼する。」

 入ってきたのは、大柄な黒人刑事と小柄な白人刑事の2人だった。

「どうぞ、そこに掛けてください。」

「どうも。」

 2人の刑事はどっかりと椅子に座り、私の様子をうかがっている。

「それで、要件は何ですか?」

「ええ、それがですね。最近、同一犯による連続殺人の事件が続いているでしょう。ニュースで見ましたか?」

「もちろん。」

「今朝、またその犯人による殺人事件がおきまして…。そのことについてお聞きしたいんです。」

「…はあ。私は何も知りませんがねぇ。」

「そうですか?実はですね、その殺人現場にあなたの物とみられる、このペンが落ちていたんです。」

 黒人刑事が持つ透明の袋の中に、見覚えのあるペンが入っていた。
 ずっと使い込んでいた思い入れのあるペンだったから、すぐに私の物だとわかった。

「何で…。」

「あなたの物なんですね?」

 白人刑事が聞いてくる。
 私はうなづけずにいた。

「署まで、ご同行をお願いします。」

Pm2:10

警察の車に乗って、警察署まで連れてこられた。

現在私は取調室に居る。

しばらく私は身の潔白を訴えた。
私には、ちゃんとしたアリバイもあるんだ。

「あなたは犯人じゃないんですね?」

 さっき私をここに連れてきたのとは別の刑事が聞いてくる。

「違うと言っているだろう。」

「では、なぜあなたの物が現場に?」

「知るか!誰かがあたしをはめたんだ!」

「その事に心当たりが?」

 …まさか。あの父親が?
 一瞬、そんな考えが頭をよぎった。

「…知らん。」

 …まさかな。
 
 取調室にさっきの白人刑事が入ってきた。

「アリバイが成立しました。」

「良かった。…じゃあ会社に帰らせてもらうよ。」

Pm7:45

今日の仕事が終わり、私は帰るために私の車がある会社の駐車場を歩いていた。

はぁ、今日は厄介な一日だった。
あんな事初めてだ。

しかし、なぜ私の物が犯行現場に?
犯人はあの父親なのだろうか…?
もしかしたら、父親は私に復讐を…?

考えると大変恐ろしくなった。

今日は急いで帰ろう。

駐車場を急ぎ足で歩く。

車に乗り込みすぐに車を出した。
駐車場の出口に急ぐ。

その時だった、柱の陰から何かが飛び出してきた。

「うわっ!!」

ドンッ!

 …は、跳ねてしまった。
 人間…を?
 車から降りる。
 人間でないことを願った。
 恐る恐る車の前を見る。

 そこにはうつ伏せになった、人間が。

 そんな…。

「だ、大丈夫ですか?」

 倒れた人に近寄り、肩を軽くたたく。

「…。」

 …どうも様子がおかしい。

「何だ?…人間じゃない?」

 その人は人間ではなく、ただの人形だった。

「何なんだ!?」

 思わずそう叫んだ瞬間、頭部に衝撃を感じた。
 
 意識が薄れた。
 朦朧とした意識の中、後ろを振り返る。

 そこには、豚のマスクをした人がいた。

 そいつは私の腕に注射をさしてきた。
 
 睡眠薬だろう。
 ほら、意識が…。


Am2:30

 目が覚めると、私は暗闇の中にいた。何も見えない。我が家の寝室ではない。どこかの、床の上にいる。ザラザラした、床の上に。
 ここは、どこだ?

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Am4:30
カイル

「俺と同じだな。」

 ダニエルの長い話はいい手掛かりになった。

「もしかしたら、その元原告の父親が俺たちを…って事じゃないのか?」

「おそらく。いや、わからんが。」

 ダニエルは顔をしかめる。

「もしその人が仕組んだことなら、これは心理実験じゃないわね。」
 と、エマ。

「そうだな。」
 ダニエルの顔が一層険しくなる。

「なあ、その元原告の父親が犯人なら、何で俺らをこんな目に?あんたは、真実を伝えただけだろ?」

 ダニエル曰く、裁判で被告を無実と証明したことに対して原告が逆恨みしているらしい。ダニエルは正しいことをしたまでなのに、なぜ嫌がらせをされなければならないんだと頭を抱えているんだと。
 
 しかしなぁ、これがダニエルへの復讐だとしても、俺は全く関係ないはずだろ。エマの方は知らねぇが。

「なんで、こんな目に。私は無実を証明しただけなのに…。」

 ダニエルが弱弱しい声を出す。
 冷静さが無くなってきているようだ。

 そんな姿に苛立ちを覚えた。

「おいっ!ここから出る方法を考えるんだ。今は犯人が誰かとか心理実験とか関係ねぇ。ここから出るんだ!」
 
 ダニエルが俺を睨んだ、

「ずいぶんと偉そうだな。お前だって、ついさっきまで声を荒げて私を殺すとまで言っていたんだぞ。お前は何かここから出る方法を思い付いたのか?」

「んだと?俺は一番最初にここから出る方法を言っただろ。一人を殺してここから出るんだ!」

「ああそうかい。じゃあ、私を殺してみろ!できるか?私は今すぐにでもお前を殺せるんだぞ!わかってるのか?」

 ダニエルがエマの鎖を切ろうとしたときに使ったノコギリを俺に向けた。俺も対抗してナイフをダニエルに向ける。

 ついにダニエルは冷静さを失った。
 心理実験だという考えはどこかに消えてしまったようだ。ここから、全員で脱出するという考えも。

「私には妻と娘がいるんだ!私の帰りを待っている!」

「そんなの知るか!」

 俺たちの言い合いがまた始まった。
 ダニエルがYシャツを腕まくりをする。


 …ん?

 ダニエルの腕に傷跡が見えた。どこかで見たことがあるような…。

「さぁ、私を殺してみろ。」

 不敵な笑顔を浮かべるダニエル。

 …思いだした!
 あの常連女と歩いていた男と同じ傷だ。
 半袖のYシャツを着たあの男と同じ場所に、全く同じ傷がある。

 こいつ…。
 まさか、あの女の浮気相手か?
 
 何が、私には妻と娘がいるだ。家族を裏切っているくせに。
そう考えると、やつの言う裁判の話も怪しいな。本当は被告は有罪だったんじゃないのか?

 あーぁ、面白い。こいつは偽善者だ。

 俺は思わず笑ってしまった。

「何が面白い!」

 俺を睨みつけるダニエルに、俺の常連客の浮気相手だろうと言おうとしたとき。

「私を殺して。」

 と、エマが言った。

Am4:40
カイル

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