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砂のくじら

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砂のくじら



群青色のソラに、船がゆく。
綺羅星のウミに、砂のくじらがたゆたう。

大きな湾の小さな入り江。
ささやかに散らばる明かりは、ビーズ細工の首飾り。

一つの明かりが一つの命。
一つの光は、一つのこころ。

小さな入り江は、さざめく波の謳う豊かなうみ。

ある日、小さな入り江に砂のくじらが降りてきた。
ゆらゆら、ふわふわ揺れながら、くじらの船は降りてきた。

くじらの船長が挨拶をする。
やあ、やあ、みなさん、こんにちは!
素敵な入り江に、お邪魔しますよ!

夜な夜なあがる花火と宴会。
入り江の住民も招待されて、
窓は煌々と照らす、サーチライトのラインストーン
夜は昼に、昼は夜に。

乗船客は、
日がな一日、笑いにまみれて、硬直したガラスの仮面。


群青色のソラに、船がゆく
綺羅星のウミに、砂のくじらがたゆたう。


波に遊ばれ、砂のくじらが崩れていく。
くじらの砂は、海に落ちた。

海草が消えた。
魚が消える。
かもめも鳴かない。
風も吹かない。
山はなりを潜め、海は歌わなくなった。

住めなくなった入り江に、ビーズが一つずつかけていく。
入り江の首飾りはちぎれた。


残った入り江の住民が、船長さんにお願いした。
ソラのくじらは、ソラに。
海のくじらは、海に。

夜な夜な続く花火と宴会。
くじらは動かない。
海に浸った砂のくじらは、重くて飛べない。

とうとう、船長さんは下船命令を出した。
ガラスの仮面を壊して、夢の時間は終わり。

大きな湾に小さな入り江。
そのど真ん中に、くじらの砂浜。

魚は来ない。
まだこない。



以上

作品名:砂のくじら 作家名:紅絹