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二人の王女(3)

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 物語は、幕を開けた
 時空を越え、世界を越え、二人の王女が出会うとき
 太陽が月と番い、夜を知るように、
 土が水と番い、海を創るように、
 世界は新しい歴史を刻み込む





「王女は行かれたのか」
 アジーは、王室側近の使いの者に訊ねた。
「はい、先刻馬を引き連れ、裏口から出発されました。私ども王室の使いの数人以外は、誰も知りません。王女様は、エリオンの森を抜けていく道をお選びになられたようです」
 使いの者の言葉に、アジーは「妥当な選択だ」と深く頷くようにして云った。
「隣国の領土へ入るようなことがあっては、国の窮状を報せてしまうことになりかねない。どの国の領地でもないエリオンの森を経由することが、良策であろう。しかし、あの森には…」
「えぇ、精霊たちがおりましょう」
「何事もなければ良いが…」
 そのときだった。使いの者が、はっと目を丸くして声を上げた。
「アジー様、あれは…」
 振り返ると、テンプル塔から持ち出し置いてあった書物から、光が漏れているのがわかった。アジーは、思わず書物へと歩み寄った。
「これは…」
 書物を開くと、光は急速に収まっていき、見慣れた文字の羅列に戻った。しかし、見たことのない項目の記載と挿入画が増えていることに気付いた。その挿入画には、二人のマルグリットの姿が描かれていた。しかし、よく見てみると、片方の王女の姿は、見慣れない滑稽な衣装を身に着けていた。
「…もう一人の王女が現われるとき、ラズリーの花はもたらされる…もう一人の王女?」
 アジーは、使いの者と顔を見合わせた。使いの者も、険しくも、戸惑いを含んだ表情でアジーを見ている。
「もう一人の王女…マルグリット王女のことではないのか…」
 一体何が起ころうというのだ…
 アジーは事態を咀嚼できないままに、ただ突如増えた記載の前に立ち尽くすだけだった。



「いったぁい!」
 真っ白に輝く光の中を急降下し続け、あすかは突如叩き付けられるようにして地面に落ちた。
 指に触れる感触から、どうやら草の生い茂る土の上に落ちたようだった。身体を打ち付けた衝撃で、節々が痛んだが、奇跡的に怪我はないようだった。
「夢の中でまで怪我をしたもんなら、たまったもんじゃないわ」
 そうこぼしながらも、身体を起こし辺りを見回した。
作品名:二人の王女(3) 作家名:紅月一花