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雪割草

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〈30〉仲直り



次の日の朝、一人で素振りをしていた助三郎の元に早苗がやってきた。

何か声をかけようとしたが何を言っていいか分からず黙っていた。
先に口を開いたのは早苗だった。

「あの…」

「なんだ?」

「その…」

「はっきりしないやつだな。集中力が切れただろ。やめた!
用事ないなら行くぞ。まどろっこしいやつは嫌いだからな!」

「あぁ、そうか!わかったよ!フン!」


汗を流すため、井戸端で水を汲み、さっきの自分の態度を反省していた。

ついはねつけてしまった。
仲直りしたかったのに。
恥ずかしくて、思ってもないこと言ってしまった。

なんで俺はこう、変な恥ずかしがりなんだろなぁ。
女にもそうだ、その辺の女には平気で声をかけられるのに一番大切な女には、
自分の気持ちを言えていない。
はぁ…嫌な性格。

ケンカの原因も俺のふざけた性格かもなぁ。
真面目にしろと言われれば言われるほど、ふざけたくなる。
人を笑わせたくなる。
何なんだ?この性格…。

母上はクソ真面目だ。
妹の千鶴も母上に似ている。

ひょっとして父上に似たのかな?
桶の中の水に映る自分の顔を見て思った。
記憶がはっきり残っていないな…。

頭を冷やすために冷たい井戸水をかぶった。





「助さん、なんでずぶぬれなんです?雨降ってましたか?」

「俺の上だけ土砂降りだったんだ。おかげで頭が冷えた!」

「へぇ。良かったですね。」

「早く身支度して、ワシのところに来なさい。」


部屋に入った途端、早苗にじろりと一瞥された。

ちっ。
遅れやがってみたいな目で見てきて。

「弥七とお銀が調べて来てくれた。近くの庄屋に何か不穏な動きがある。そこで今日これから懲らしめに行く。よいな?」

「はい。」



庄屋と手を組んでいたのは代官だった。

護衛の侍を引き連れていたので、刃向って来た。
自然と、乱闘になってしまった。

「助さん!なんでこっち来るんだ!あっちの敵倒せよ!」

「お前こそご隠居の傍にいろよ!危なくて見てられん!」

「悪かったな!弱くて!」

「すきだらけだぞ!」

「そんなことない!」

くちゲンカしながら闘っていたせいか早苗は集中できていなかった。
前の敵に気を取られ後ろが空いていた。

「格さん!後ろ!」

どうにか回り込み、振り下ろされる刀を受け止めた。
良かった、格さんに当たらなかった…
しかし、つい怒鳴ってしまった

「危なっかしいな!良く見てないな!集中しろ!」

「わかってる!」

それからもなんとか戦いを続け
一通り片づけて、悪者をしょっ引かせた。



「二人とも、来なさい。」
いきなり光圀から声をかけられた。

「座りなさい。」

「あの、ここは片付いたので、帰りましょう。まだ日が高いので出立できますし。」

「いえ、宿で休息を。」

「…」
みるみる表情が険しくなった。

「あの、ご隠居?」

「どうされました?」

「助三郎!格之進!この期に及んでまだケンカしておるのか!?
いい加減にしなさい!仲直りしろと言ったではないか!いったい何をしておった!?
なんじゃあの闘い方は!弥七とお銀に迷惑かけておったではないか!」

「申し訳ございません…。」

「すみません…。」

「わしに謝るより、はよう仲直りしなさい!それまでわしは出立せぬからな!」


「助さん、格さん。ちゃんと話し合うのよ!良いわね!」

「お二人さん、ご隠居は俺がみてるんで、腹を割って話して仲直りしてくだせい。では…。」


二人で取り残された。

しばらく気まずい沈黙が漂った。


「…助かった。助さんがいなかったら怪我するところだった…」

「…気にするな。誰にでも隙はできる。」

ここだ、ここで謝らないと。
思い切って口を開いた。

「…あのさ、あの事は俺が悪かった。ちょっとふざけすぎたし、言い過ぎたかもしれん。」

「…いいや、俺も悪かった。金ばかりに気を取られてた。」

「これから、息抜きは違うことでする。…明日、飲まないか?」

「あぁ。ご隠居や新助は?」

「今回は外してもらおう。お前とさしで飲みたい。」

「わかった。」


「あと、これから気をつけるな。ふざけすぎないように。」

「…ちょっと不安だな。お前の性格だろ?そのおチャラけたのは。」

「あっ言ったな!お前だって几帳面でお固いのは性格だろ?」

「ふっ。ハハハハ!」

「ハハハハ!」

「まぁ、しかたないか、お互い生れつき持った物は変えられん。」

「そうだ。しかたない。」

「じゃあ、帰るか!」

「あぁ。」








晩、宿で風呂からあがってきた早苗は、助三郎の変な行動が目についた。

「…助さん?机で何してる?」

「げっ、もう上がったのか?…なんでもない。」

そう言われても、気になったので机に近づいた、
なぜか助三郎は逃げ出そうとしていた。


「あっ!助さん、これはなんだ!?」

「…え?新助?なんだって?今行く!」

「待て!新助なんかいないだろ?」

「ぐぇ…襟をつかむな。首が絞まる…」

「あぁ、すまん。お前、落書きしたな!?日誌に。」

机の上に置いてあった日誌に書き込みがしてあった。

「バレたか…でもな格さん、それは落書きじゃない。字だ。訂正したんだ…。」

「…相変わらず字が、アレだなぁ。なんて直したのかよくわからん。」

「悪かったな!どうせ汚いよ!」

「で何を訂正したかった?」

「…俺の監視日誌だろ?…日に日に悪くなって行く。それを橋野様に見せるんだろ?」

「あぁ、もちろん。前のやつは水戸に送ったぞ。書ききれなくなったから。」

「嘘だろ!?」

「は?」

「おしまいだ…橋野家の面々に見られてる…ヤバい!」

は?
もうわたし全部この目で見てるし…

「そこまでヤバいこと書いてあったかな?」

浮気みたいな本当にヤバい事なら日誌なんかに書かず、助三郎さまを投げ飛ばすか斬り捨てる!
日誌に書いてあるのは、勝手に抜け出した、二日酔いで歩けなかった、ご隠居さまに怒られたとか、かわいいもの。


「…もしかして渥美格之進は橋野家の密偵か?」

「なんで?」

「日誌には俺の醜態ばかり。俺の行動をよくじっと見てるし。
女に目を奪われると直ぐに怒る…。」

「え?」

「お前、親戚だっていうから余計そうだろ?橋野様が俺を信用してないからだ…。見張らせてヤバいことがあったら俺をどうにかする気だ!」

「ぶっ。はははは!」

真剣にありもしないことを恐れている助三郎の様子があまりにもおかしくて
早苗は吹いた。

「やっぱりそうなのか?頼まれたんだな?」

「ははは…なわけ無いだろ?心配するな。そんなこと頼まれてない。」

「本当か?」

「もちろん。心配するな。」

「良かった…友達に監視なんかされたらかなわないからな。」

「…友達?」

「あぁ。お前は俺の友達だ!格さん!」

「…そうか。友達か。」

「これからもよろしくな!」

「あぁ…」

うれしい。
ただの同行人じゃなかった。好かれてた。
友達って言ってくれた。



しかし、悲しさが同時に襲ってきた。
わたしは早苗。
作品名:雪割草 作家名:喜世