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雪割草

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〈26〉綺麗な着物



鳴海の宿にほど近い家に泊めてもらうことになった。
ついて早速、助三郎は光圀から呼び出された。

「助さん、明日遣いを頼まれてくれんかの?」

…またか、今度はなんだろう。

「本当なら挨拶にいかねばならんが。城に入るのは面倒じゃ。」

尾張藩に遣いだそうだ。

確かに挨拶にいくのはずいぶん面倒だ。時間がかかってしまう。
でも、たまには格さんを遣わせればいいんじゃないか?

一度、行かせたら帰ってこなくなったな。あれのせいか?
それともあの後、ご隠居に行かせてくれって頼んだのがいけないのかな?
まぁ、いいや。信頼してくれてるからだろう。

「ここからちと遠いが頼みますよ。」

「はい。わかりました。」







「早苗さん、由紀さん。ご隠居が女だけ来いって。」

「なんだろ?楽しそう。」

「おい!今、男だぞ!新助に聞かれる!」

「大丈夫よ、いないから。戻ってもいいわよ。」

「なんで?どこ行ったんです?」

「ご隠居が遣いに行かせたの。適当な理由作って。」

「かわいそう…わたしのせいですか?」

「気にしないで。おいしいもの食べに行ってお土産買って来いっていう遣いだから。」

「そうですか。じゃあいいか。」




「ご隠居さま。わたしたちだけ集めてどうするんです?」

「みんなで近くの有松絞りを見に行こうと思っての。おなごのほうが目がたかい。良いものが買える。」

「やった!早苗、きれいな反物見られるわよ。」

「楽しみね。」


久しぶりに女同士できゃっきゃ言いながら歩ける。
すれ違う女の子にも変な目で見られない。



「やはり娘さんたちに囲まれていた方が華やかでたのしいのう。ワシがもっと若ければなお楽しいのに。」

「まぁ、ご隠居さまったら。」

「ごめんなさいね。いつも助さんと格さんで脇をかためてて!」

「よいよい。ハッハッハ!」


「あっ、由紀。これ見て!」

「綺麗ね。やっぱり高級品よ。」

「いいなぁ。こんな着物ほしいなぁ。」

「旦那の禄が高ければ将来いい着物買ってもらえるかも。」

「そうかもね。一枚でいいから欲しいな。」

「早苗、たくさん欲しくないの?」

「一枚でいいの。一生懸命働いて稼いだお金で買ってくれたのを大切に着たいの。」

「ふぅん。欲がないわね。」


贈り物、されたことない。
物が欲しいわけじゃないけど…。
あの人の気持ちが知りたい。
本当にわたしのこと好きなのか…。



「…本当は地味な男物の着物より、きれいな女物を着たいじゃろうな。」

「そうですね。でも動きにくいですよ女物は…。」

「そうか。しかたないの…」

いろいろと見て回り、光圀は女三人の意見を参考にして一巻き絞りを買った。

「三人とも、せっかくじゃ、好きなのを買ってもよいぞ。あまり高いの買うと格さんに怒られるが。まぁいないからいいであろ。」

「ありがとうございます!でも、ご隠居さま。わたしが値段を聞いて決めますからね。お二人さん、高すぎるのは却下ですよ。」

「やはり、早苗は格さんと一緒か…。はぁ。」

「あたりまえです!同じ人間ですから。」



夕刻、助三郎は城からの返事、新助はお菓子を土産に帰ってきた。

「二人ともご苦労さま。ゆっくり休みなさい。」

「はい。」


夕餉の後、助三郎が誘ってきた。

「なぁ。今から出歩かないか?」

「どこ行くんだ?」

「いいんですか?勝手に出てって。」

「ご隠居には明日の朝聞かれたら言えばいい。」

「飲みになら行かないぞ。」

「今日は違う。いいから行こう。行ったらわかるから。な?」

早苗と助三郎、新助はこっそり抜け出した。


作品名:雪割草 作家名:喜世