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第7章 広島の攻防



札幌と福岡での戦いから五日
「宮寺じゃんか!何買いに来たの?」
本を小脇に抱えて本屋から出た俺に偶然本屋に来た長谷崎が声をかける
「ブレイブフォースの新刊がでたから…」
「へぇ…宮寺は単行本派なんだ」
「お前はどうなんだ?」
「週刊ブレイブ派」
週刊ブレイブとは超人気小説(こっちの世界の話です)ブレイブフォースを筆頭に様々なジャンルの新鋭作家の作品を載せたノベル雑誌である
「あれは他の作品も乗ってるだろ 俺はブレイブフォースだけ読みたいから」
「なるほどね…一理あるかも じゃあねっ!」
長谷崎は本屋の中へと消えた
「なんだったんだあいつは…」

竜狩からの連絡が入ったのは本屋からの帰り道だった
「すぐに来れる?」
「大丈夫だ 学校だな?」
「うん 待ってるよ」
俺はすぐに学校へ向かった

「今回はどこで暴れだしたんだ?」
「広島だよ」
「よーし 行くか」
「頑張って」
俺たちはゲートをくぐった

「うわっ!」
ゲートから出た俺たちの頭上を一頭の龍がかすめていく
「あっぶねーなおいっ!」
山村の声に反応し竜が振り返る
「グォォォォォォォッ!」
すごいスピードで襲い掛かってきた竜はあっという間に尾蔵をくわえ一気に高度を上げた
「なんで俺がーーーーーーーっ!」
尾蔵の叫びも竜には届かない
「ガァッ!」
高度を上げた竜は尾蔵の鎧を一撃で噛み砕いた
「うぉぁっ!」
粉々になった鎧の破片と共に竜の口から零れ落ちた尾蔵を受け止めたのは来村の魔法だった
「うひぃーーー…助かったぜ」
「すごいパワーとスピードだ 捕まったらほぼアウトだな」
俺は戦略を組み立て始めた
「グォォォォォッ!」
その間にも竜は次々と襲いかかってくる
「動きを止められたらいいが… どうすればいい?」
来村と話そうと思っても距離が開いていてしかもタイミングもなかった
「魔法は使えない…とすると使えるのは地形か」
俺はあたりを見渡して岩が二つ並んでいる所を見つけた
「あそこか よしっ!」
俺は素早く竜の前に身を出し岩に向かって走り出した
「こっちだ!早く来いっ!」
竜もこっちに気づき追ってきた
「間に合うか…間に合わなくても死ぬだけか」
俺は走り続けた
「グォォッ!」
竜はスピードを上げて俺を捕まえに来る
「あとちょっと…間に合えっ!」
竜の爪が俺の背中を掴みかけたとき俺は岩と岩の間に飛び込み竜は首だけを間に突っ込み
岩に激突した
「グワァッ!?」
突っ込んだ勢いのまま竜の顔は俺の近くまで伸び、あわや俺の首筋に噛みつかれるかという所だったが俺の姿勢が滑り込んだままののけぞり姿勢だったのでなんとか助かった
「そらよっ!」
突っ込んできた長谷崎が竜の背骨をへし折る
「ギャァァァァァァッ!」
殺されかけた相手ながら同情してしまいそうになるほどの悲鳴と骨折音を上げて竜が倒れこむ
「グ、グォォッ!」
死なばもろともと言わんばかりに目の前に座り込んでいた俺に向けて炎を噴く準備をしていることに俺は気が付いた
「やっべぇ」
素早く立ち上がり竜の首と翼の間に飛び込むことで何とか難を逃れたが俺の居たあたりの地面が黒こげになっていただけに少し恐怖を覚えた俺だった
「グ、ガァァ…」
長谷崎の一撃は致命傷となりやがて竜は動かなくなった
「何てことなかったね」
俺は小学校から一緒だったはずの長谷崎の底知れぬ黒さに身の毛がよだつ気がした…
「お疲れ様」
現れた竜狩はいつも通り怪我の治療に入る
「やっぱり能力が上がってるね」
「やっぱりな 今回はちょっとまずかった」
「それでも一撃ってとこがいいよね」
のん気に竜狩は言うが近くで見ている奴にとっては恐怖、竜にとっては悪魔以外の何者でもない
「まあ仲間にするには素晴らしい人材だがな」
さらなる激戦が俺たちを待ち受けていることを俺たちはまだ知らない…