二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

思うにこれは恋

INDEX|1ページ/15ページ|

次のページ
 

第1話 思うにこれは恋



『すべては、俺中心に全てうまく物事は運ぶと、疑いもしなかったんだよ。』

ギャンレルは、そうつぶやき空を見上げた。
時刻は夕暮れ時。
ギムレー復活を予感するように、紅く染まった空に、北からの風により黒色に染まったの雲が早足で駆けていく。
夕闇に風は低音を轟々と立て、冷たい風が木々の葉を宙へと巻き上げた。
そんな様子をギャンレルは城の一部分である大きな石に腰掛け、足を組み、見上げていた。
また、その石の冷たさにゾッとした。
そう。
ここは彼の良く知る暑い砂漠の大都市ペレジアではない。
ここはイーリス軍の本拠地なのだ。

辺りは薄暗くなり始め、イーリス城を下から見上げると窓から松明の炎の明かりが風に煽られ、揺らめいている。
その明かりに照らし出され、城の者たちの影がいくつも伸び、移動しているのが見えた。
そろそろ軍事演習も終わり、食事の時間であろう。
強い風の音でもかき消されない、人懐っこい兵士たちの明るい声が彼の耳までも届いた。
そんな明るい声は、くだらないと彼はふんと鼻を鳴らした。

ギャンレルはここイーリスの本拠地にいても、たいていはいつも1人。
誰とも馴れ合わず、孤独な存在だった。
それもそのはず、ギャンレルの過去はペレジアの王。
過去は過去の過ちとして、クロムに彼の姉を自殺に追い込んだことを許してもらおうとも、
ここは彼の姉を慕う人々の本拠地でもあり、
通りすがる彼への悪意や疑りの視線を拭い去ることは、誰にもできなかったが、
それは彼にとって構わないことだった。

今だって、ほら、軍の演習をサボり、
一人で、誰にも知らない場所で佇んでいる方がいい。
しかし、これは彼にとっては決して特別なことではなかった。
孤独は彼の人生に付いて回った。

「ペレジアの王であった時代。
 俺の取り巻きや部下達。
 または、女中や貴族の娘達。
 絶えず人は俺の回りにゃ、絶える事はなかった。
 ・・・が、しかし、だな。」
恐怖の表情で媚びへつらう顔が、彼の嗜虐心を煽っていた過去。
そう言って、自分の言葉に妙に納得し自分の顎に手を当て、短い朱色のひげを撫ぜた。

自分の国民でさえも平気で人を殺めてきた。

心の記憶の片隅に出来事。
その出来事が、今さらのように蘇って来る。
昔の彼では気にも留めなかった、数多の出来事であるのにも関わらず。

―「オレにしちゃ、あんたのやった行いはどうでもいいんだ。
  それよりもこのオレに見つかってしまうことが、失敗だったと思うぜ。」
 「お願いです!後生です!ギャンレル様!
  お咎めはわたくしだけにしてください!」
  決して家族には!
  どうかお願いです!」
頭を床にあらん限りにこすり付け、プライドというものを捨てた男を前に、ギャンレルは腕を組み見下ろした。
そして、暗くにやりと笑い口端を上げた。
 「ぎゃはは!プライドの高いおめぇさんが、そこまで俺に跪くとは本当に滑稽だねぇ。
  気分がいいぜぇ。
  そんなに家族が大切かぁ?」
その下非た笑いを見てぞっとした男は顔を上げた。
 「あっちを見てみな。」
ギャンレルはそう面白いように声をかけ、すっと扉の向こうへと指を指した。
 「あそこにおめぇさんの家族がいるから、よぅく見てみな。」
男はその指の示す先へと視線を向けた。
 「あんたの家族愛にゃ、オレも感心するぜ。
  ほうら、あんたの女房や娘はあんたの深い愛に痛く感激しているだろう?
  こんなに大量の赤い涙を流しているんだぜ?」

 「その男を殺せ。」

城中に、男の断末魔が響き渡った。―


ギャンレルは生まれたときから何不自由ない生活であった。
ペレジアの王子として生まれ、
当然のようにペレジアの王として君臨するために、すべてのものが用意されていた。
賢い彼は持つ者と持たざる者についてよく理解しており、
持たざる者は弱者であり、生きていても意味がないと思っていた。
特にそのことについて彼に確信させることになった原因は、前イーリス王からの戦争であった。
ペレジアが商業国家のことに目をつけ、軍事力がないことをいいことに、略奪を繰り返していた事実。
幼い彼に、不当にも映るその光景は、その考えを揺るぎないないものにした。
弱いものは強いものから奪われて当然。
すべての不幸の原因は弱者であるから。
悪いことは弱者であること。
ならば、弱者はギャルレンにとって畜生だったのだ。

その思いを信念にまで変えた結果。
彼は国王になった暁に、自分の商業国家を徐々に変貌させていく。
交易が盛んで、黙っていても国庫は潤っていく為、充分に国力はあった。
後は、政策の方針だけ。
その国力を国民へ見返ることはなく、軍事力増強に大幅に使った。
もし、軍事力を増大させなければ、またもイーリス国に国を蹂躙させることになる。
そんな謳い文句で、国民は新しい王に従った。
商業国家が軍事国家として強くなるごとに、力を使ってみたいと駆られる自分と兵の統率。
憎しみは時代と共に変貌した平和国家イーリス国へと向かった。
他国にだけ目が向くのはよい。
力は時に外側だけ向けられるものではない。
持て余した力は、時に内側にも向けられるものだ。

そうして、恐怖政治を強いてきた結果・・・
聖なるものを壊した時、彼はクロムに倒され、その上自国の民にすら見放されてしまったのだ。

軍事力を増幅させ、
裏切り、
恐怖政治で人々を支配し、
それが糸も簡単に崩れ落ちる様は・・・

まるで自分が一人のしがない部下を裏切るのと同じようであると分かった。

人の我慢という心はそんなに長くは続かないということを彼は悟った。

そうして、一人国王をやっていた彼は、何もかも失った。
そんな彼の身を寄せるところは、彼の粗雑な性格を買ってくれる海賊ぐらいしかなかったのだった。

一国の王から海賊の下っ端へと落ちてしまった人生は、
昔の己からすると間違いなくクズ以外の何者でもなかった。

「人としての底辺まで落ちてみて、理解することがあるみてえだな。」

この言葉は間違いないだろうと彼は思った。

その理解したことを胸に置き、彼のガラスのような心は疼いた。
自分の胸に手を添え、城の喧騒に耳を傾けた。
その喧騒は今の彼にとって、心地よい歌声のように聞こえた。
ギャンレルがその輪の中心であるはずもないのに。
暗愚王時代を思い出し、彼は静かに苦笑した。

「あの頃の俺は、いつも何かにいらついていた。」

ここイーリス城で、自分に悪意がある者にどんな目で見られようが、
または、どんなに孤独でいようが、
どこか居心地がいいと思ってしまう自分がいることに気がついていた。

それは、いつの頃からだっただろうか?
自分自身に自問自答した。

「クロムの野郎に、あいつの姉のことで許されたからだと言って、俺は改心したわけじゃなかったからなんだが・・・
 んん・・・いや、許される・・・
 もしくはそれがきっかけになったのか。」

仲間になれと言われたあの日。
持つ者クロムと持たざる者自分を比較せずにはいられなかった。

大勢の仲間たちを引き連れ、毅然と胸を張るクロム王子に愕然とした自分。
少し立ち止まり、遠目から彼らを見たとき、思わず目を背けたくなった。
作品名:思うにこれは恋 作家名:ワルス虎