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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ツイン’ズ

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02_運命の分かれ道


「……でこうなったわけ?」
 俺と俺’は美咲に事の一部始終簡潔に話した。しかし、さすがは美咲、話の飲み込みが速い。てゆーか、こんな話誰が信じるんだ普通。
「カワイイ……よく見るとかわいいな美咲って」
 これを言ったのは俺’だ。しかも何の脈絡もない一言だ。
「何を今さら、当たり前じゃない」
 美咲が俺’の話に乗る。まぁ、たしかに美咲はカワイイ、クラスでもカワイイ部類に入ると思う。でも、そんなことは俺は一度も口に出して言ったことはなかった。しかし、こやつは、このヤローはそれを言ったんだ、俺に許可もなく。
「おい美咲こいつの言うこと間に受けるなよ」
「どうしてぇ〜、ねぇナオキちゃん」
 美咲は俺’に向かって微笑んで見せた。
 俺’ちゃん付けで呼ばれるとなんだか不愉快になる。
「ちゃんを付けるなちゃんを」
「だって、こっちの直樹は女の子なんだから、?ちゃん?でいいじゃない」
「俺が言われてるみたいだからヤダ」
 そんな俺らの会話に対して俺’は顔をほんのり桜色に染め小さな声で呟いた。
「私は別にいいけど」
「ほら、ナオキちゃんもこう言ってるじゃない。……で、これからどうする気?」
 突然の話の切り替えに二人の俺は黙り込んでしまった。
「そうだ!」
 美咲は何かを思いついたように手をパンと叩きながら突然立ち上がった。
「先生に頼むっていうのは?」
「「ダメだ」」
 二人の俺が同時に言った。
「なんでぇ〜、いい考えだと思ったのに」
 当たり前だ。あんな奴に助けを求めるなんて死んでもヤダっていうか、殺される。
 先生というのは俺のクラスの担任の玉藻妖狐[タマモヨウコ]先生のことで、学校でも1、2を争う変わり者の科学教師で、いわゆる『マッドサイエンティスト』ってやつだ。彼女に助けを求めたら、モルモットにされるのがオチだとそう断言できる。
 手を挙げる俺’に美咲が先生気取りをした。
「はい、ナオキさん。なんですか?」
「そんなことより、手短な問題として家族に何て言うかが問題だと思うんだけど」
 俺’の言うことはもっとだ。同じ家にいてはいつかは見つかる。てゆーか、食事とか風呂とか大変だし、別々に暮らすっていっても行くとこないし。みたいな……。
「たしかにそうだ、家族にバレないようにするのは不可能に近いな」
「私の家来たら? うちの両親海外旅行行っちゃって1ヶ月は帰って来ないよ」
「よし、俺’よかったな美咲の家で養ってもらえ」
「なんで私なの」
「あたりまえだろ、俺の方が俺だからだ」
 何を言ってるのか普通の人には通じないだろうが、俺’にはちゃんと伝わったと思う。ようするに俺が言いたかったのはこういうことだ。
 まず、俺’は自分のことを私と言っている、そして、身体は女だ。ようするに元の俺とはちょっと違うわけだ。俺の方が分裂前の俺に近い。ということ。
「わかった」
 俺’は少し不満そうだが、同意した。さすが俺の分身、物分りが良くて大変よろしい。
 嬉しそう顔をした美咲が俺’の両手を掴んだ。
「わ〜い、ナオキちゃんが来てくれるの、じゃあ家に帰ったらお化粧したり、かわいい服着せたり……」
「やめろ、それは俺が許さん」
「なんで、別にいいじゃない、あんたじゃないんだから」
「そうだけど。おい、おまえも何か言えよ」
「別に構わないけど」
「あのさぁ〜、さっきから思ってたんだけど、直樹とナオキちゃんって似てるけど別人だねやっぱり、身体もそうだけど、性格も少し違うみたい」
 二人のナオキは『ほぉ』といった感じで深くうなずいた。そう言われてみたらそうだ、俺’の方がやっぱちょっと女っぽいかも。
「じゃあ、ナオキちゃん貰って行くねぇ〜」
 そう言って美咲は俺’を強引に連れて行ってしまった。
「おい、待て、ちょっと」
 俺は二人を追いかけようとしたがやめた。なぜって? それはこたつから出たくなかったから。

 私と美咲の家は隣同士。歩いてほんとにちょっとの距離なのだが、その短い距離で事件が起きた。
 私と美咲が直樹の家を出たとたんにある人物から声をかけられたのだ。その名は玉藻 妖狐、美咲と私のクラスの担任だ。
「はぁ〜い、美咲に直樹じゃない」
「先生こんにちは〜」
 明るく手を振りあいさつする美咲を見たが、私はできれば今は関わり合いになりたくない。
「…………」
「あらぁん、直樹、気分でも悪いの?」
 直樹は玉藻先生が苦手なのだ。なぜ苦手かというと……言えない、とても口に出しては言えない、とにかくモルモットにされたということだ。その直樹の分身である私もまた玉藻先生が苦手というのも、まぁわかる。
「先生ちょうど良かった、先生に頼みたいことがあるんだけどいいですか?」
 まさか美咲のやつ、玉藻先生に私のことを頼むんじゃ……。
 私の予感はみごと的中した。
「先生、ナオキのことなんだけど」
「直樹がどうかしたの?」
 慌てて私は二人の間に割り込んだ。
「あ、ああ、なんでもないです、気にしないでください」
「ちょっと、黙ってなさいよ」
 私は美咲に口を押さえられてしまって、声が出せない。
「う、うぐ、はな……せ」
「先生じつは、このナオキは直樹じゃないんです」
「……は?」
 普通こんなこと言われたら『は?』って表情になるに決まってる。
 私は美咲の手を振り払った。
「今日の美咲ちょっと変なんです」
「ふ〜ん、でも直樹も少しおかしいというか、いつもより声とかが女の子っぽいっていうか」
「そうなんです、このナオキは女の子なんです」
「えぇ! やっぱりそうだったの、前からそうじゃないかなぁって思ってたのよね。こんな女顔の男なんていないわよね」
「そうじゃなくて、だからホントは男なんだけど、女に、あぁもういいですとにかく来て下さい」
 美咲は私と玉藻先生の手を引き、勝手に私の家に上がり込んで私の部屋に連れていかれた。不法侵入だ!

 俺は思わず『あっ!』と言ってしまった。当たり前だ、いきなりドアを開けられそこに立ってるのが美咲と俺’とそれと玉藻先生。てゆーか、なんで玉藻先生がいるんだよ。
 玉藻先生は思わず、俺を見て俺’を見てこう言った。
「双子だったの!?」
 これは現実性に富んだノーマルな反応だ。マッドサイエンティストもたまには一般人の思考で物事を考えるらしい。
「違います先生、直樹たちは双子じゃなくて」
「そうよねぇん。男と女が生まれるのは二卵生、一卵性と違ってこんなにそっくりに生まれることはないわ」
 ――で結局俺たち3人は俺の身に何が起きたのかを玉藻先生に詳しく説明した。
「なるほどねぇ〜、わかったわ、先生に任せなさい」
 そうなると思った。てゆーか、飲み込みが早い流石はマッドサイエンティスト。そういう問題か?
 玉藻先生は突然俺と俺’の手を取った。
「あたしの研究ラボに行くわよ」
「「は?」」
 俺と俺’はいきなりのことに驚き抵抗しようとしたが、玉藻先生はどこからか注射器を取り出し、グサ、グサと俺と俺’に刺してきた。まず最初に刺された俺’がバタン。そして、俺もいつの間にか気を失ってた――。

 私が目を覚ましたのは……どこだここ?
「あらぁん、お目覚め」