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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ツイン’ズ

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13_二人の未来


 眩しい光をまぶたの上に感じて私は目を覚ます。
 心配そうな顔をしてみんなが私を見ている。なんか罪悪感を感じちゃうな……。
「……ごめん、みんな」
 そう……ごめん。今までのこと、今まで私がしたこと全部覚えてる……、さっきまでの私は私じゃなかった。だけど直樹♂を殺そうとしたり、学校壊したり……みんなに迷惑かけちゃったな。
「ごめんじゃないだろ、俺を殺そうとしたり、学校壊したのもおまえだろ!」
「だから、ごめん」
 なんかいろいろとわかっちゃったような気がする。私ってここにいちゃいけないような気がする。この世界にいちゃいけないんだ。
 私は時雨直樹の偽者。あっちの方が直樹らしいもん。だから私は戻らなきゃいけない。

「直樹、こっちのナオキちゃんはどうするつもりなのぉん? ひとりに戻るなら手伝うわよぉん」
 玉藻先生は今か今かと注射器を構えている。
 ……そうだな。ひとりに戻るのか……でも、こいつは俺じゃない。こいつはこいつで生きてるんだよな。顔は同じだけど……それ以外は違うよな……。
 遊羅が不安そうな瞳で俺を見つめているのに気付いた。
「どうした遊羅?」
「お姉ちゃんに何かするの?」
 遊羅は姉ができてすごく喜んでいた。母親も喜んでいた。このままでいいような気がする……このままで全部うまく行く様な気がする。
「妖狐先生、戻して欲しい。もちろん直樹♂ベースで」
 はっ!? 今なんて言った。

 これが最善な道なんだと思う。
「もともとひとりだった人が元に戻るだけだから……私は消えてもいいと思う。でもちょっと寂しいかな、遊羅ごめんね」
「お姉ちゃん、どうしたの? どこかに行っちゃうの?」
「そんなところかな。うん、遊羅に逢えてよかったよ、みんな逢えてよかった」
 でも、私がいるとみんなに迷惑かけちゃうからな……だから……私は……。
「……本当に……それで……ぃぃの?」
「!?」
 ビックリしたぁ〜。宙か、って宙がなんでうちにいるの……てゆーか、これって不法侵入?
「……不法侵入じゃなぃ……ぉ母さんに入れてもらった」
「私のことも忘れないでよっ!」
 美咲まで……。
「私もだ」
 愛まで……。
「あのぉ〜、僕たちもいるんですけど」
 真ちゃんに椎凪に鏡野さんまで、それに真ちゃんにぴったりくっ付いてる女の子まで? みんなどうして?
 椎凪は髪の毛をかき上げながら、腕をバシッと伸ばした。その手に握られていたのはビニール袋。
「君の家で鍋をやるっていうからみんなで一品ずつ材料を持ってきたんじゃないか?」
 鍋……そういえば今晩は鍋って言ってたっけ? でもどうしてみんなが?
「……鍋は……みんなで食べるのが……ぃぃ」
 もしかして宙が呼んだの?
 小さく宙はうなずいた。
 私の肩に誰かがそっと手を乗せた。見上げるとそこには直樹♂がいた。
「別にこのまんまでいいんじゃないか? 世界征服とか、もうする気ないだろ?」
 直樹♂はそう言いながら鍋の準備を始めているみんなを見ていた。
「ホントにいいのかな?」
「さぁ、テキトーに言っただけだからな」
「それは直樹♂らしい」
 でもよかった。なんかホッとした。こいつにそう言ってもらえるのが一番ホッとする。

 わかんねぇな。これでホントにいいのか?
 でも、今はそんなことより鍋だな。鍋食うぞ鍋!
「みんな何もって来たんだ?」
 俺の言葉に順番に持ってきたものを出す。
 まず、椎凪が持ってきたのは『しらたき』、真ちゃんは『とうふ』、美咲は『ネギ』、星川は『高級和牛』、鏡野さんは『エノキ茸』、愛は『高級鴨肉』、宙は『マヨネーズ』?
「なんでマヨネーズなんか持ってきてんだよ!?」
「……冗談……ホントはコッチ」
 そう言って宙がビニール袋の中から取り出したのは、な、なんとカレーのルーだった。
「ってオイっ。鍋にカレーのルーは入れないだろ」
「……マヨネーズと一緒に入れると……おしぃかも?」
 それに関してはノーコメントだな。味覚はひとそれぞれだからな。俺はカレーにマヨネーズかけて食う奴を知っているが、鍋にカレー味の鍋にマヨネーズをかけて食う奴は知らない。
「……アタシも……知らなぃ」
 宙の手がバッと動きアリス人形が突き出された、そのアリス人形はスーパーの袋を持っていた。
「コレが本物ダ、コノヤロー!」
 アリスの差し出した袋を俺は受け取り中を見ると、白菜が入っていた。よかった普通の物も持ってきてたのか。
 これだけ俺としてはまだまだ材料が欲しいとこだが、これだけあれば十分だろ。よっしゃ、煮込むぞ!
 そんな感じでいつの間にか鍋パーティーが始まった。つまり戦いの火蓋が斬って落とされたわけだ。
 煮えたぎるスープの中で鮮やかに色を変えてゆく高級和牛に俺を目をつけた。もうすぐだ、もうすぐ食べごろだ。
「今だっ!!」
「フッ」
「何っ!?」
 俺と同じ肉を狙っていたやつがもう一人いたなんて……。俺が手を伸ばした瞬間、向かい側の席に座っていた椎凪が自慢のフェイシングを生かしやがって俺の肉を横取りしやがった。
 仕方ない、他の肉を食べるとするか……。
「ってもう肉がない!?」
 肉はすでに取られていた。この貧乏人たちがっ! 肉を先に取るんじゃない!!
 みんなおいしそうに肉食いやがって……みんな……あれっ、俺’と遊羅がいないぞ、どこいったんだ?

 こうやって空を見るのも久しぶりだな……。
「お姉ちゃん何してるの、風邪引いちゃうよ」
「あっ、遊羅」
 夜空に気を取られていたせいかぜんぜん近づいて来るのに気付かなかった。
「お姉ちゃんお鍋食べないの?」
「遊羅だって食べないのか?」
「お姉ちゃんが心配だったから」
「私はネギが嫌いだから」
 ネギが嫌いなのはホントだけど、ここにいるのはただ空を見たかっただけ。そう、全部あの空から降ってきた謎の発行物体が原因だった。だから空が見たくなったのかもしれない。
「ん?」
 遊羅の腕が私の腕に絡んできた。妹体温が直に伝わって来る。あたたかいな……。
「ねぇお姉ちゃん、今日は一緒にお風呂入って一緒に寝ていい?」
「いいよ」
「本当に? やったー、うれしいv」
 遊羅が私の腕を強引に引っ張ってどこかに連れて行こうとする。
「えっ何?」
「ほら、早くお風呂入ろうよぉ」
「今から? まだ早いと思うけど」
「いいから早く入ろー」
 ……ま、いっか。

 肉取られてしょーがないから、だし汁ばっか飲んでたらトイレ行きたくなっちまった。
 あれっ、俺’と遊羅だ。廊下で会うなんて二人でどこ行ってたんだ?
「あっ、お兄ちゃん」
「二人でどこ行ってたんだ?」
「ヒミツだよ。ねっ、お姉ちゃん?」
「直樹♂、ちょっと嫉妬したとか?」
「別にぃ〜」
 たしかに俺’の言うとおりちょっと嫉妬してる。妹を取られた気がして……でも、遊羅のうれしそうな笑顔を見ると別にいっかって思う。
「ねぇ、お兄ちゃんも一緒にお風呂入ろーよ?」
「はっ!?」
「これからお姉ちゃんとお風呂に入るんだけど、お兄ちゃんもどう?」
「え、遠慮しとく」
 こ、高2と中2の女子と、い、一緒に入れるわけ、な、ないだろっ!
「お兄ちゃん顔赤いよぉ」
「よからぬ想像でもしたんだろ?」
「してないっ!!」