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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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Ambassador of chaos K  眠らされた剣

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やや暖かくなってきた一週間後、花たちが暖かさに喜んでいるかのような表情を見せたある日だった。
 いつも人気のない花屋の裏路地にお似合いな恰好をした人物が現れた。

「おや、花を買わないお客さんかな……」
「なんか、いかにもってオーラがあるよ」
「久しぶりの何でも業だ」

 その花を買わないお客の男は、花屋の前に来てKとSを見てこう聞いた。

「ここは、花屋ですか?」
「「いいえ、何でも屋です」」

 にっと笑った二人が口をそろえて答え、花屋の中に男が入ってきた。

「初めまして、私 右京 洋次郎(うきょう・ようじろう)と申します」
「初めまして俺はS、そっちの青眼が……」
「Kだ、よろしく」
「以後お見知りおきを……さっそく、依頼の話に入りたいのですが……奥で話すことはできませんか?」
「ご希望なら移しましょう」
「ありがとうございます」

 この右京という男、身形容姿共に一般人とは思えない古風のオーラを持っていた。
オールバックに固めた髪・凛々しい切れ長の目・色白い肌・それに似合わぬ真っ黒なスーツ・スーツからも分かる細見で背筋の真っ直ぐな立ち姿……
まるで現代の武士を見ているような男だった。

 綺麗な花々の店先とはかなり違った雰囲気の店の後ろ……
KとSが毎日の生活を送っている殺風景な部屋へ三人は場所を移した。

「さて、S……お茶でも用意してこい」
「はいはーい」

 そういって、Sを下げさせ……Kは右京をソファへ座らせ出方を見た。
いつも人気のないはずの花屋の店先ですら話したくないというほどの相手……
Kの相棒のSに疑いをかける可能性を考えたのである。

「さすがと言ったところですね」
「何がだ?」
「もう既に依頼人の心を読みにかかっているわけですか」
「それがこの仕事の性分さ」
「それでも世の中には見えませんね、はっきりとした貴方の働きが」
「それは、俺という存在のせいだ」
「【混沌の使者】……そのはっきりとしない貴方の存在を使わせて頂きたい」

 そういって、手に持っていたケースから小切手とある封筒をKに渡した。

「依頼は、剣探しです」
「剣? このご時世にねえ」
「ええ、それもただの剣ではありません……Kさん、ヤマタノオロチで思い当りませんか?」
「おい、その剣って【天叢雲剣】じゃないだろうな」
「珍しい人もいるものですね、【草薙剣】って言わないなんて……」
「どっちでも正解だろ? で、その剣を探せと」
「ええ、相棒のSさん以外には知られない極秘という形で【草薙剣】を探しだし、手に入れれば依頼完了とします」
「了解」

 Kはそう言い、手渡された小切手を右京へ返した。

「Kさん?」
「俺は前払いを受け取らない主義でね、その半額で後日送り返してきな」
「残りは、完了後ですか」

 ふっと笑ったKと右京、Kのその意向に従い小切手を受け取りケースに戻した。

「しかし……【草薙剣】ね、三種の神器にこだわる理由を聞かせ願いたいところだか……」
「それも極秘だと言うことわかっているのではないのですか? Kさん」

 Kは、やれやれと言ったような表情をした。
お互いがお互いの心を先読みしあっているような会話だと思ったからである。
依頼人とその依頼遂行人がまるで敵対している、そんな雰囲気を読み取っていた。

「Kさん、貴方に一つだけ教えておきます」
「なんだ?」
「人間は不安定を望みません、安定を望む時人間は、なんにでも縋ろうとします……例えそれが非科学的な物であろうとも……」
「俺は、ただ極秘にその任務を遂行する」
「いい知らせを楽しみにしています」

 そう言って、ソファから立ち上がり光ある花屋の外へ右京は帰って行った。

「あ、右京さん帰っちゃった?」
「面倒くさい組織を相手にすることになるかもしれないな」
「え? なに?」
「独り言だ……さ、仕事だS」
「ああ!」

 KとSは右京から渡された封筒を開けることになるが、この動作でこれから起こるかもしれない
 日本混乱の渦中へ投げ出される合図だったということを知る由もなかった。