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アリス・スターズ
アリス・スターズ
novelistID. 204
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不妊であること

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不妊であること


 白い建物から出た彼女は、ひとつため息をついた。
 それは通りすがった人かおろか、高速で通り過ぎていく自転車にも分かるほど、大きなため息であった。
「また……かぁ。」
 右手に握られたままの数枚の紙。反対の手には診察券。
 ショルダーバッグから黄色いマルチケースを取り出すと診察券をしまい、代わりに青い表紙の四角いノートを取り出す。右手の紙は1枚を残して半分に折りたたみ、ケースに入れてバッグにしまった。
 残された1枚の紙は、いわゆる処方箋だ。
《デュファストン 1日2錠 朝夕食後 14日間》
 見慣れてしまった薬の名前。
「いつになったら、解放されるんかな……?」
 ぽつり呟いた言葉は、今度は誰にも聞こえなかった。

 多嚢胞性卵巣症候群。
 彼女が4年前、告げられた病名だ。
 難しく言えばLHの値がFSHより高く、そのために卵胞が育たない。簡単に言えば、排卵しない。症状はそれだけではない。まず、排卵しないから月経が安定しない、もしくは来ない。それから多毛症。声変わり。
 そして彼女が現在進行形で悩む「不妊」。