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【コマンド擬人化】安藤と林道 2

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「はぁ〜、疲れた……」
「おう、お疲れ」

 玄関のドアってこんなに重かったっけなんて考えながら玄関へと滑り込んで、更に太ったつもりはないのに重い身体を引き摺り最後の気力を振り絞ってリビングへと辿り着くと、林道はフローリングにペタンと座り込んで煙草を吸いながら本を読んでいた。

 正面のテレビは消えているけどその前にはゲーム機が出しっぱなしになっていて、恐らく昨日明け方まで二人して遊んでたまんまなんだろうな。
 その少し横には空になってるっぽいポテトチップスの袋なんかも淋しげにフローリングに投げ出されてて、絶対にこれが林道の今日食べた食事の全てだろうなと思う。いや、ポテトチップが食事というのはどうかと思うけど。
 おまけに林道の奥には床に直接灰皿が置かれてて、吸殻が山になっていた。いくらフローリングだからってあんまりだ。

 俺が凄い頑張ってきたってのにお前は優雅なもんだななんて恨み言の一つも言いたくなる。まぁ、俺が頑張るからって林道も頑張らないといけないという訳はないんだけど。そして俺が頑張ると必然的に林道にも皺寄せが行ったりするんだけど。

 その辺はとりあえず脇に追いやってオレは胡坐をかいて座っている林道の背後に回ると、覆い被さるみたいにして圧し掛かった。
 林道の左肩に顔を乗せて両腕もだらりとその両肩に預ける形になって、林道にはけっこうな負担がいってるはずだ。その証拠にチラリと俺に投げられた視線が冷たかった。そして眉間にはお約束の皺。

「……重い」

 そんなこと言っても俺を払いのけるってことはしないんだもんなぁ。おまけに昨日あんなに盛り上がって続きをしたがってたのに、コントローラーの様子なんかから俺がいない間にゲームを進めたりってこともしてないみたいだし。
 おまけに右手に持ってた煙草がさり気なく遠ざけられてこれだもんなぁと思わずにいられない。

「だって、疲れたんだもん」
「それでかわいこぶってるつもりか……?」

 別にそういう訳じゃないけどさ。

「大体、お前がキャパに余裕あるとか大口叩くから悪いんだろうが」
「えー、別に大口じゃねぇし。事実だし」
「だからってバカ正直に言う奴があるかよ」

 そのおかげでゲームだって止まったままなんだしよ、とブツブツ言う林道の言葉でさっきの俺の考えが正しいことが証明された。律儀な奴だ。
 確かに出かける時に帰るまで続き待っててって言ったけど、言わなかったとしても待っててくれたんじゃないかなとも思う。

「まぁいいじゃん、ちゃんと帰ってこれたんだし」
「……そういう問題じゃ、」
「癒してよ」

 俺の言葉に更に眉間をキュッと詰めて俺を睨んだ林道は再び足に置いた本へと視線を戻す。だけど林道はきっと膝に広げた本はもう読んでないんじゃねぇのかな。これは俺の勘って言うか確信?

「すっげー疲れたから癒して」

 そう言って顔を林道の方へと傾けて唇を突き出してみると、林道があからさまに嫌そうな顔をした。なんだろうな、例えるなら青汁に生クリームと納豆と苺ジャムとオレンジジュース混ぜて飲ませたらこんな顔するかもって感じの顔。

 俺の言いたいことが分かってるだろう林道は、嫌そうな顔を引っ込めたかと思うと俺の唇に持っていた煙草を突っ込んだ。
 分かってるくせになぁと思いながらも俺は林道の手にした煙草からニコチンを肺の中へと落とし込む。
 仕事の後の一服は確かに格別の味がして、確かに美味い。林道から貰ったのなら尚更、なのかどうかは分からないけど。

 俺が吸い込んだのを確認すると林道は俺の唇から煙草を抜き取ったので、ふぅと細く白い煙を吐き出した。そして林道はそれを横目で確認しながら、自分の口へと煙草を運ぶ。
 林道が煙草を吸う仕草はなんだか気だるげで妙な雰囲気があった。
 普段はただの引きこもりのくせに、時々こんな風に変な空気を放つ時があって、そういう時は俺の中の何かが刺激されるんだよな。

 そしてその様子を眺めながら、俺は面倒臭い奴だよなぁと思う。
 俺は好きなものは好きだって感じるしそれを言うのに躊躇いだってほとんどない。だけど、林道は言うだけじゃなく感じることにすら戸惑いを覚えるんじゃないのかな。
 林道の頭の中がどうなっているのかは知らないけど、その思考回路はいっそ未知の領域だ。

 言われたことはないけど、林道は俺のことが大好きだと思うんだよな。
 別に俺はそれを林道に言って欲しいって訳じゃないけど、きっと林道は言ったら楽になると思うんだよ。
 なのにそれどころか擦り寄った俺を甘やかすことすらろくに出来ないなんて。

 林道はこれで終わりとばかりに自分だけ煙草をふかしている。
 だから俺は肩に回した手で林道の毛先を摘んで引っ張ってやると、林道はどうしていいか分からないような顔を、した。

「なぁ、お前は癒してくんないの?」

 俺の言葉に今度は分かりやすく動揺したのが分かった。
 こんな風に絡む俺なんてさっさキスでもしてあしらってしまえばいいのに。お前だって本当はそうしたいんじゃねぇの。

 いやぁ、ホントお前面倒臭いよ。そう言いながらずっとお前と一緒にいる俺だって大概なのかもしれないけど。