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シリエトクの男

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「じゃあ、また来月だね」

女はいつものように屈託のない笑顔で男を送り出す。
男はシャワーを浴びると、女に別れを告げて網走のラブホテルを後にする。

男は月に一度、知床から西へ80kmほど離れた網走へ来ていた。

網走のデリヘルに勤める風俗嬢のSは、男の唯一の拠り所だ。

四十路を迎えたにもかかわらず、性欲だけは衰えを知らない。
むしろ男のそれは10代の頃より増しているほどだった。
女性に対して奥手の男は、田舎の風俗嬢に入れ込んでいた。

* * *

北海道は冬景色に包まれていた。


シベリアから流れ出た流氷は、例年より少し早く知床に接岸した。

オホーツク海に面する知床半島の流氷は、北海道の冬の風物詩でもある。

アイヌ語の「シリエトク」が語源となる知床。
地図を見てもわかるように、知床とは「大地の突端」を意味する。


男は北の大地の最果てに、生活の拠点を戻した。

作品名:シリエトクの男 作家名:OBTKN