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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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水世界

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君に会いたい







君に会いたいと

君に会いたいと

零れ落ちる花びらを冷たい瞳で見つめて

自分の熱を捨て去ろうと

もがいた

苦しみ

泣いた


それでも僕は君に会いたいと

会いたいと

会いたいと

願っていた


崩れ落ちる人の心や 砕け散る星の命

散っていった花のきらめきを

すべて見ないふりをして

痛みを踏み潰して

ただ、走り続けた


誰かの痛みを 知ることもなく
自分の痛みを 感じないようにして
それでも 叫んでいた



瞳は飢えたように
光を反射して 呻く 輝く 憎たらしく


僕には何も無い

ただ、からっぽの心でどこまでも歩き続けるしかない
走るしかないんだ

僕には何も無い

僕には何も無いんだ

影も光も 自分の熱すら 嘘のようだ

(幻 すべては虚構)


転んで
泥にまみれて
傷口から血が流れて

ああ ああ 赤い 赤い あかい

流れた涙は透明の液体

ああ とうめいにひかる


真っ暗闇 月が僕を見下ろしていた
鋭い光

ただ ひとつ



「空虚な手」



愚か



それでも僕は

君に会いたいと

会いたいと


君に会いたい

















作品名:水世界 作家名:冬野すいみ