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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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水世界

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落下する眩暈







落ちる

どこまでも 落ちる


果てしない世界

終わりなど見えない


この目からこぼれ落ちるものは何なのだろう
ただの液体



ぽろ ぽろ ぽろ ぽろ
心も体も溶けてすべてこの目から流れ落ちていくような
錯覚
それは望み

ゆめ



夢は愚か
唾棄すべき幻
偶像 光 残像 渇望 欲望


けれど、愛おしい
見苦しくすがってしまう
夢の世界
狂おしい愛情

ぼんやりとした……

欲しい
欲しい
ぜんぶ 欲しい

食べて
食べて
喰らいつくしてしまいたい

ぽたり ぽたり
零れ落ちる
液体の存在が不可思議 そしてそんな自分は滑稽
少し笑いたい 歪つな笑みの形に唇をゆがめる

水は
この目を潤して
心はどろり、溶けた

目の前がぐらり、ゆがむ


くら くら

くら


落ちる落ちる 落ちる

落ちる

どこまでも

それが果てない空ならばと、愚かにも願う

水色に溶けて滲んでゆけたなら
この瞳の水も……


落ちる


なびく黒髪は何の感傷も持たないのに
どこかおどろおどろしくて、吐きそうになる
けれど、好き
人の情念が溢れだしたみたいだから


両の手を大きく広げて

抱きしめるみたいに

あい、みたいに


落ちる



生のゆくさき
死のゆくさき


きっと、空虚(から)っぽは きれい









作品名:水世界 作家名:冬野すいみ