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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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「あ、でもその水飲んだおかげで狼とかニズホッグとか見えたんだぜ?声も聞こえたし」
「ふぅ〜ん。私が飲んだって仕方ないしなぁ〜」
「飲んだらなんか変化あるかもよ?」
「へんなこと言うなよ。飲めとは言われてないよ」
「じゃぁなんて言われたんだよ?」
「ん…?教えな〜い」
「あっ!てめっ!隠す気かよ!」
「オマエに教えるとろくでもないこと企みそうだからな!」
 そう言ってじゃれている時だった。
 取り合いになっていた小瓶が教室の床に落ちる。

「あっ!」
 なぜか小瓶は割れず、その中身の水が流れ出てくる。
 そして、そこへ持っていた黒い羽根が手から離れ、その水の上にふわりと乗った。

「ばかッ!なんてことしてくれんだよ!」
 必死にかき集めようとしたが、小さな小瓶に入っていた少量の水は集まらない。

 その直後だった。そこから黒い羽根が次々と舞い上がり、それはどんどん何かの形になってゆく。
「なっ…なんなんだよ!これ!」

 驚く雄吾の横で、私はほっとしたような、ガッカリしたような、複雑な気分だった。
 その黒い羽根の塊が形作ったもの、それは黒い翼を背中につけた、黒い狼の守護獣フィルグスだった。

「お…おい!狼じゃねぇか!」
 雄吾は怯む。
 だが私はそっけなく答える。
「なんだ、まだ見えるのか」
「『まだ見えるのか』じゃねぇよ!見えるに決まってんだろ!解毒剤も貰ってねぇのに!」
「[解毒]って、それ表現間違ってないか?」
「いいんだよッ!それよりコイツ大丈夫なのか?」

 現れたフィルグスは、黒い羽根の翼と、黒い狼の体、そしてグレーの瞳。太陽の光が横から差し込みブルーの瞳にも見える。それはとても優しい目をしていた。

 私はすぐに返事をした。
「あぁ!こいつは大丈夫だ!心配すんなって!」


 私は満面の笑みを隠すように、窓際で両腕を頭の後ろで組み、キラキラと輝く海を見た。 



             ───── FIN ─────