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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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 直後、ミシェルの起こした強い風によって態勢を崩していたた狼たちは、一斉にニズに向かっていく。
【ニズ!】
 私が叫ぶと、ニズは私の方を一瞬見て、集まってきた狼たちの周りをぐるりと囲う。そしてそのまま巻きつき狼の喉元を次々と喰らっていく。そこからは血が飛び散る。それと同時にニズは大きな翼を振り下ろし、狼たちの血を赤い花びらへと変えてゆく。

【おのれ……我は消滅などせぬ…ナーストレンドで待っておるからの……仲間よ……】
 しゃがれた声が脳内に低く響く。

 ダークグリーンに光る風は真っ赤な花びらを巻き散らした。それが収まる時、狼たちは全て消えていた。海面には大量の花びらが散る。


「これ……あの時の花びら……こういうことだったのか……!」
 雄吾は私を抱きとめていた腕に力を入れた。
 するとそこへ降りてくる白い光の塊。その中には白い翼を広げたラシャが目を瞑ったままで羽ばたいている。

「ラシャ!よかった!生きてるんだね?」
 私はすかさず声をかけたが、ラシャは反応がない。
「おい……なんかヘンじゃねぇか?ちょっと離れようぜ」
 そう言って雄吾は私の腕を引き、海岸へと歩き始めた所だった。
【咲夜!雄吾!】
 ミシェルが叫ぶ声が聞こえる。
 こちらに向かって飛んできている……?
 だけど私の体……おかしい…?

 私はめまいと共に、急に体に力が入らなくなった。そのまま海の中へ沈みそうになった私を雄吾は抱きかかえる。
「おい!どうしたんだよ!」

 返事をしたいのに声が出ない。

【咲夜!しっかりして!】
 勢いよく飛んでくるニズは、海中に潜り、私と雄吾を背中に乗せて上空へと飛び立つ。ニズの背中で雄吾に抱えられた私は、ぼやける視界の隙間から、ラシャの方を見た。ラシャは、白い翼を大きく羽ばたかせ、ゆっくりと顔を上げる。その顔は不気味な笑みを浮かべ、血のような真っ赤な瞳が私たちの姿を映す。

 あれは…[白い悪魔]!

 その姿を私が捉えると間もなく、私は完全に体の自由を奪われた。