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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その4】

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 ラシャが凄く動揺しているのが伝わってくる。私とは違う理由で……

「そんなこと、私たちができるわけがないでしょう?」
「そうです。何の訓練もしていない咲夜ができるわけがないんです。なのにあなたはここにこうして咲夜の体の表層に出てきている。しかもフィルグスの封印を両肩につけて」
「何が言いたいの?」
 動揺を隠すかのように、ラシャはミシェルを睨む。


「あなたは狼一族の術をかけられたことで、相手の心を操作できるようになったようですね。調べさせてもらいましたよ。少々痛い目に合いましたけどね」
 ミシェルは[ワタシ]の反対側のソファーに座って、血の付いたコートの裾をめくる。

「もしかしたら咲夜は自らあなたの元へ行ったのかもしれません。でもあなたが呼ばなければ、今の咲夜の能力では、あそこへは入ることができません」
「ワタシは……!」

「もちろん、あなたに呼ばれるまま、咲夜があなたの元へ行ったとしても、結界があるんですから、それだけではあなたは表層には出られなかったでしょう。もしあなたがその能力を使い、咲夜をコントロールしたとしたら?そして咲夜をコントロールし、自らの魂と呼応させたとすれば……あの結界を破壊することができたはずです。ただ、多少の傷を負いますが」
 そう言ってミシェルは立ち上がり、[ワタシ]の手を取った。

【手のひらには傷のあと……あの時のだ。結界を破り、血の垂れた手をあの赤い舌は舐めた……これは……自己治癒能力というのだろうか……?】

 ミシェルは掴んでいた手を離し、再び窓の外を見ていた。
「そしてその傷が完治しているのも、狼一族の術のおかげでしょう?」

 ラシャは泣きそうな声で言った。
「ワタシはアナタをずっと待っていたのに……この世界に来て、やっと初めて逢えたというのに……」

 それを聞いて振り返ったミシェルの目は、濃いブルーになっていた。
「その体は咲夜のものだ。返すつもりがないのなら、手段を選びませんよ?」
 静かにそう言ったミシェルの体からは、ダークグリーンの光が放たれ始める。
 ラシャは急に泣くのをやめた。