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白波瀬編

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 翌日、ほうき片手に私の緊張は最高潮に達しようとしていた。
 昨日の夜、考えて考えて考え抜いて決めた私の結論は、社長の手をこれ以上煩わせるわけにはいかないって事だった。
 だから今日はちゃんとそう伝えなきゃ。私はどんな事だってするって、結果を出してみせます! って言ったんだもの。自分の言葉に責任は持たないと……。
 そんなことを考えていると、ガチャリと言うドアが開く音と共に和田さんと田村さんの「おはようございます」という挨拶が聞こえてきた。

「おはよう」

 それに答える社長のあの低い声に、肩をビクリとすくめる。

「どうした、葉月」

 目敏く私の様子に気づいた社長が、頭上から覗き込むように声を掛けてきた。

「あの、その……昨日のことでお話が――」
「――分かった、部屋に来い」
「はい」

 私は掃除の手を止め、社長室に入った。

作品名:白波瀬編 作家名:有馬音文