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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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moonlight(後編)

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第三章(後編)


「……!」
 実緒の言葉に、ネオは何もかもが真っ白な風景を一瞬見た。何もない、空っぽの世界を。
 二階へと向かう音が聞こえる。
「実緒、実緒! ミオ――――――ッ!!」
 しかし、ネオの悲痛な叫びも空しく、ドンッ! と自室に引きこもった音が外から聞こえた。
「……」
 彼女の心の傷は、修復することが出来ないほど、深かった。彼女の手を掴むには、あまりにも遠い距離に自分はいた。
 何もかもが、遅かった。
 小学生の頃にあったことが再び、ドラマのハイライトみたいにパッ、パッ、とシーンが切り替わりながら、頭の中で再現される。
 あの頃と変わらない。友達の力にもなっていない。
 その事実だけが、ネオの胸に刻まれる。
 脱力して、両膝が自然と冷たいコンクリートの上につく。
 違う……違う……。
 わたしは、わたしは、本当に実緒のことを……。
 助けたかったから、ここに来たのよ。
 本当なのよ……。
 身体が震え、絶望感でいっぱいになる。
 そんな彼女の気持ちが、雨で映し出される。ポツ、ポツ、と空から少しずつ降ってくる。
「実緒……みお……わたしたち、しんゆう、でしょ……」
 わたしの、せい、で……。
 わたしが気づいてたら、どうだったの? 教えてよ……ねぇ、実緒……。
 こんなことで……こんな、バカみたいなことで……。


「うわああああああああ――――――っ!!」


 大粒の涙がとめどなく、流れ落ちた。
 その涙を隠すように、雨が降り出した。
作品名:moonlight(後編) 作家名:永山あゆむ